東京ビックサイトで開催中の「ワイヤレスジャパン2011」の基調講演で、イー・アクセス代表取締役社長のEric Gan氏は、モバイルブロードバンド事業における同社の取り組みと、今後の事業戦略について説明した。
Eric氏は冒頭、3月11日に発生した東日本大震災における、同社の携帯電話事業に関する影響について触れた。震災発生当日は停電や断線などによって878の基地局が停止状態となったが、1週間後には電力の復旧などにより150局まで減少。4月11日にはすべての基地局が復旧したという。またトラフィックも10倍以上に増えたものの、通話接続率は99.5%を維持、データ通信も問題なく利用できる状態だったと語った。
災害の影響が他社より軽微であった背景には、イー・アクセスの基地局が他社より小型であること、法定では基地局に3時間分のバッテリーが必要なところを、6時間、あるいは24時間持続できる大容量のものを用意していたこと、あらかじめ大きな通信容量をとっていたことなどが挙げられる。今後は、震災に強いことを生かしてBCP(事業継続計画)への活用に力を入れるほか、災害・電力対策として2012年度と2013年度に合わせて20億円の投資を予定しているとした。
続いてEric氏は、イー・アクセスとイー・モバイルのこれまでを振り返った。同社は当初、ADSLによる固定ブロードバンド回線を提供するベンチャーとして設立され、その後の成長を見越して、2007年にモバイルによるブロードバンド通信事業に参入した。
後発である強みを生かし、他社より性能が高く小型の設備を導入できたこと、モバイルWi-Fiルータの先駆けとなる「Pocket WiFi」など、他社と差別化できる端末や料金施策を提供してきたこと、そして固定ブロードバンド同様ホールセール事業を展開していることなどが強みとなり、モバイルブロードバンド市場で高い市場シェアと成長を維持することができたと話す。現在は固定・モバイル合わせて500万会員を獲得しているという。
モバイルブロードバンド市場は2012年度でも人口普及率がまだ6.5%程度と推測されており、今後も成長の余地があるとEric氏は話す。市場をけん引してきたイー・アクセスとしては、DC-HSDPA方式による下り最大42Mbpsの高速通信を実現する「EMOBILE G4」の人口カバー率を、2011年には40%から70%に拡大。さらにLTEの導入準備を進め、2012年度の早い段階で下り最大75Mbpsの通信速度を実現したいとしている。
高速なネットワークを構築する一方で、Eric氏は「より上のレイヤーの施策も必要」とし、今後の成長のために3つの分野を強化したいと話す。そのうちの1つがPocket WiFiの強化だ。同社ではEMOBILE G4に対応した次世代モデルを2012年度末までに発売するとしている。
次にFMC(Fixed Mobile Convergence)。2月にイー・アクセスがイー・モバイルを吸収合併し、固定・モバイルの連携サービスが提供しやすくなったことに加え、NTT東日本が提供する「フレッツ光」のオプションサービスであるモバイルWi-Fiルータに、イー・モバイルの回線を提供するなど、他社の固定回線との連携も進めている。こうした施策により、2012年度はFMCによる累計加入者数を、従来の4倍である10万人にまで引き上げたいとした。
そして最後はスマートフォンだ。Android搭載スマートフォンの急速な伸びに加え、ARPU(1人あたりの月間売上高)がデータ通信サービス単体よりも、音声・データを組み合わせたスマートフォンの方が大きいことから、スマートフォン向け施策を強化していくという。
テザリング機能を利用しても料金上限が変化しない「スマートプラン」、500円をプラスすることで、1回10分までの通話を月300回定額で利用できる「スマートプランライト」を強みとして展開する一方、端末についても、2012年度末までにタブレット型のデバイスを含む5機種以上のスマートフォンを投入する予定と公表している。
スマートフォンの強化とともに、企業認知度を高めるため、新キャラクターにAKB48の板野友美さんを起用するなど、マーケティングも強化。Eric氏は「データカンパニーからコンシューマーカンパニーへ変化し、チャレンジしていきたいと」と語った。
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