NTTドコモ代表取締役社長の山田隆持氏は、5月25日に開幕した「ワイヤレスジャパン2011」の基調講演で「新たな成長に向けたドコモの取り組み」について語った。
まず、東日本大震災におけるNTTドコモの対応や今後の対策について説明した。3月12日時点では4900局がサービスを中断したが、4月30日には震災前のエリアにほぼ復旧したという。「原発20km圏内のエリアも、40mの鉄塔に防護服を着てアンテナを取り付けた。作業中に震度5の余震があったが、高性能アンテナを設置して復旧した」と苦労を語った。
新たな災害対策として、(1)重要エリアの通信の確保、(2)被災エリアへの迅速な対応、(3)災害時における顧客の利便性の向上を掲げた。対策のための設備投資費は200億円を超える。具体的には、重要エリアの通信環境を確保するため、全国約100カ所に360度全方位のアンテナを設置する。これは半径7kmをカバーできる「大ゾーン方式基地局」で、人口の約35%をカバーできるという。さらには都道府県庁や市区町村役場などの通信を確保するために、基地局の自家発電(エンジン)による無停電化やバッテリの24時間化を推進するとした。
震災が起きた3月11日、なかなか携帯電話がつながらないという声が多く聞かれた。NTTドコモでは平常時の50~60倍 のトラフィックがあったという。そのため、音声通話は80%まで規制せざるを得なかったが、パケット通信は30%程度の規制で済んだという。この経験から、ユーザーに比較的つながりやすいメールを使うよう推進していくほか、パケットを利用して音声メッセージをやりとりできる「災害用音声ファイルメッセージサービス」を2011年度中に提供するとした。
NTTドコモでは、2012年度の営業利益として9000億円以上を達成するため、スマートフォンの推進やLTEサービス「Xi」の拡大、新たな成長分野への開拓、グローバル展開の推進に力を入れる。Xiに対しては、3年間で3000億円の設備投資を計画しているという。
2011年夏モデルでは、これまでで最多となるスマートフォン9モデルをラインアップし、大幅に強化している。なお、ワイヤレスジャパンのNTTドコモブースでは、2011年夏モデルとしてタッチアンドトライコーナーで展示されているのはスマートフォンのみ。そこからもスマートフォンにかける意気込みが垣間見える。
2011年度は、スマートフォンの販売台数約600万台を目指す。2011年秋にはXiを搭載したタブレットを、2011年冬にはスマートフォンを発売するという。NTTドコモではタブレット端末を2台目以降の端末として購入した場合に代金を割り引く「月々サポートセット割」を6月から導入すると発表しており、複数台の所有を推進し始めた。また、スマートフォン拡大への戦略のひとつとして、従来のiモードサービスをスマートフォンでも対応させることで、iモードユーザーの乗り換えに取り組む。NTTドコモでは、これらの施策により、2012年度はフィーチャーフォン(iモードケータイ)とスマートフォンの販売数が逆転するだろうとした。
NTTドコモは、4月1日以降に発売する26機種にSIMロック解除機能を搭載している。これまでに200件程度、SIMロックを解除をしたという。
山田氏は、2011年から先の10年はモバイルを核とした「総合サービス企業」へと進化させると意気込む。まずはスマートフォンユーザーの満足度を向上させ、全体での「お客様満足度ナンバーワン」を目指すと語った。
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