中国アニメ、ゲーム事情(上海編) --海賊版は当たり前!でも魅力ある消費人口(2)

戸口功一(株式会社メディア開発綜研)2011年05月19日 18時18分
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 (前回の続き

◆動画共有サービスでアニメを視聴

 中国ではPC上で動画、マンガなどをダウンロード、ストリーミングできるサイトが多数存在している。

 それらの動画共有サイトの多くは、独自のツールを提供しているケースも多く、そのツールをダウンロードすればコンテンツを無料で視聴できるようになっている。

 例えば、上海では「優酷網」「土豆網」「迅雷」の大手3サイトの人気が高い。前回、若者がテレビをあまり視聴しないと述べたが、これらの動画共有サイトの画質をみると、YouTube、ニコニコ動画などに比べて非常にクリアである。

 最近ではHD対応が当たり前になってきている。上海で視聴するテレビ放送の画質からみても、PCで動画を視聴したほうが鮮明かもしれない。

 問題は、動画共有サイトの多くがコンテンツのアップロードを、ユーザーがするもので、運営側は権利者からの削除要請に十分対応しきれていない状態になっている、点にある。

 いくつかの企業はすでに上場を果たしており、今後、上場を目指している企業もある。そんな優良企業のサービスに海賊版が横行しているのだ。正規ルートでなかなか視聴できない環境にあるからといって許されるものではない。

 最近では、米国をはじめ各国から改善要請が相次いでいる。

◆一方、ゲームは?

 日本のアニメと同様に中国では日本のゲームも人気が高い。

 先日、上海の地下鉄に乗車したが、車内では携帯電話(スマートフォン含む)を片手に、耳にはデジタルオーディオプレーヤーにつながったヘッドホンをしている人を多くみかけた。

 それに次いで多くみかけたのはPSPだ。地下鉄には何度も乗車したが、そのたびにPSPを確認している。PSPで何をしているのかというと、多くが映像を視聴しているようだ。

 PCからメモリースティックにダウンロードしてPSPを利用して視聴しているとのこと。ゲームをしている人はといえば、日本のゲームソフトをプレイしていた。

 実は中国では正規にPSPを販売していないとのこと。では、どうしてこれほど街中でPSPをみかけるのだろうか。上海には日本のヤマダ電機やビックカメラのような大手量販店があり、そこでは正規品を扱っているようだ。

 一方、テレビや冷蔵庫など家電製品を取り扱っていない、PC、携帯電話専門店と呼ばれる商業ビルが多くあり、そこでは正規品とはいえない商品が売られている。中国では山寨ケータイ(模倣携帯電話機)が多く売られているが、ほとんどがこのような商業ビルで販売されている。

 いわゆる不正輸入品である。ドコモ、ソフトバンクなどロゴが入った端末が新品であるといって売られているケースもある。

 まさにそこでPSPは販売されているのである。価格をみると1台1400元(日本円で約1万8200円)で意外に高い印象をうけた。しかし、上海の富裕層には大した額ではないという。

 やはり、中国ではゲームといえばオンラインゲームであり、パッケージごとに購入する習慣が根づいていない。コンソールゲームを遊ぶ場合は映像と同じように無料でPCからソフトをダウンロードして楽しむようだ。

 そのためかマーケットで見かけるゲームソフトは日本の古いソフトであった。ゲームにおいてもアニメと同じくビジネスをしていくには非常にハードルが高いといえよう。

◆割り切ったビジネス展開が必要

 このような状況下で、正規にビジネスを行うことは日本企業としては非常に難しいことなのかもしれない。

 しかし、それでも13億人のマーケットに魅力を感じるのであれば、あえて踏み込むことは選択肢として間違ってはいないと思う。また進出しないという選択肢もありである。

 ただ政府に頑張ってもらう、といった人任せな姿勢ではいつまで経っても事態を好転させないだろう。

 海賊版であるとは言え、それが正規版のプロモーションになっている、と強烈なポジティブ思考に置き換えるくらいの発想が必要なのかもしれない。

 と言うのも、日本のアニメを視聴している中国の人は、海賊版とわかって視聴している。そしてオリジナルを観たい、入手したい、日本の秋葉原に行きたいと思っているのは事実である。

 このことは今後、中国でビジネスする上で重要な素因であると思う。うがった見方をすると、もちろん、中国の知的財産に対する姿勢を改めてもらわなければならないのは当然だが、日本のコンテンツ企業にも柔軟な姿勢が欠けているのではないかと感じることがある。

 「郷にいれば郷に従え」という言葉が世界各国であるように、その地域に応じたビジネスのやり方を割り切ってしていく必要が早急に求められる。

 日本のアニメ、ゲームは最先端であり、クールなのかもしれない。しかし、いつまでも環境整備を待って意固地になっていると、いつの間にかオールドコンテンツになっている可能性は高い。後ずさりするのではなく、一歩前へ進まなくてはいけない。

*今回のコラムは筆者が「ビジネスファミ通」に寄稿したものを抜粋。

◇ライタプロフィール
 戸口功一(とぐち こういち)
 1992年(株)メディア開発綜研の前身、菊地事務所(メディア開発・綜研)にてスタッフとして参加。2000年法人化で主任研究員、2005年より現職。1992年電通総研「情報メディア白書」の編集に参加。現在も執筆編集に携わる。その他、インプレス「ケータイ白書」、「ネット広告白書」、新映像産業推進センター(現デジタルコンテンツ協会)「新映像産業白書」、「マルチメディア白書」、「デジタルコンテンツ白書」の執筆および経済産業省、総務省の報告書等を多数手掛ける。

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