企業活動における「データマネジメント」の重要性の啓発、実践を目的に、ITベンダーとユーザー企業など約20社が発起人となり、「一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)」が4月18日に設立された。会長には、NTTデータ相談役の浜口友一氏が就任している。
同日に開催された記者発表会で、浜口氏は「昔から、データマネジメントは重要だと言われ続けてきたが、日本での活用は進んでいないのが現状。JDMCは、データ管理に関連する製品を取り扱うベンダーと、それを利用するユーザーとで、一緒に、データマネジメントの方法について考えていきたい」と設立の目的を語った。
JDMCでは、データマネジメントについて「重要な情報、ビジネスデータを明確にし、それが正しい状態で生成され、かつ必要とする人がいつでも使用可能な状態にすること。および不要となったデータを適切に処理するための活動全般」であると定義している。企業活動において、データが生成、蓄積、統合、活用、破棄されるプロセス全般の方法論の確立と標準化を進めることで、タイムリーなビジネス状況の把握や、顧客へのサービス向上、コンプライアンス面でのメリットを得ようというものだ。
しかし、JDMC理事の、日本テラデータ、コーポレート・エバンジェリスト エグゼクティブ・コンサルタントの金井啓一氏によれば、現実には、入力ミスやルールの不統一などが原因で、そうしたデータ活用は多くの場合、実現できていないとする。
「データが汚れる直接的な原因は、社会システムレベルで、ユニークな個人コードや企業コードなどが存在していないこと、ベンダーもユーザーも目の前のシステム開発が最優先で個別最適のシステム化が多く行われてきたこと、(活用しやすいデータを生成し管理する取り組みを進めるにあたって)システム部門の権限が弱いことなどが挙げられる」(金井氏)
また、データ管理専門の組織や担当者が不在で投資判断の軸が「効率化」のみに偏りすぎているという組織的な問題のほか、国家的なデータ活用への意識が希薄な点、業界標準への取り組みが限定的にしか行われていない点といった制度的な問題も大きいという。
しかし、ビジネスで生み出されるデータの多様化と、量の爆発的な増加や、データ連携によるイノベーションの推進といった形で、データマネジメントの方法論の確立と実践が求められる新たな局面が訪れつつあるというのが、JDMC会員社の共通の認識だという。
情報システムがビジネス戦略の策定、実行に不可欠となっている中、データマネジメントの問題で、情報システムが経営の「羅針盤」として機能していないという状況を打破することを目的として、JDMCでは、データマネジメントの重要性の普及展開と、実際的なデータマネジメント手法の確立を通じて日本企業、組織の国際競争力強化に寄与することを目指す。
活動内容としては、「企業や組織におけるデータの適正な処理・活用手法」「データ関連製品・サービスに関わる情報と評価」「データマネジメント実施組織・体制の整備」「データに関わるITエンジニア・人材の育成」「業界や国におけるデータ規約・標準等の調査提言」などを挙げる。活動テーマとしては、マスタデータ管理、データ統合などの課題と実践手法、ビジネスインテリジェンス、ビジネスアナリティクス、データウェアハウスの高度な活用など、実践を目的とした調査研究に加え、実態調査やセミナー、情報活用優良企業の表彰制度の制定といった普及、啓発活動を行っていくとしている。
また、基本ポリシーとして、社会的な影響力のある活動を行うこと、企業個別の利害を越え、海外の情報、動向に目を向けつつ、内外の有識者や有力団体との連携を図るといったオープンさを掲げている。
重要性は認識されつつも「地味」な活動として、特に日本企業ではこれまでうまく運用されてこなかったデータマネジメントという課題に対し、ベンダー、ユーザーの枠を越えてノウハウの蓄積やガイドラインの策定といった取り組みを行うことで、データ管理の品質向上、ひいては日本企業のビジネス向上に寄与したいとする。
JDMCでは、年会費20万円~40万円のベンダー企業会員(正会員A~C)と、会費無料のユーザー会員、特別会員を今後広く募っていくとしている。まずは、ベンダー企業、ユーザー企業のそれぞれについて、50社の参加を目標にするという。
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