SAPジャパンは3月9日、ビジネスインテリジェンス(BI)とデータ管理、それぞれのツールの新版となる「SAP BusinessObjects Business Intelligence(BI)4.0」と「SAP BusinessObjects Enterprise Information Management(EIM)4.0」の提供を開始したと発表した。
BusinessObjects BIはBIのフロントツール、BusinessObjects EIMはETLやデータのクレンジングなどの機能を持つ。今回の新版では連携機能が強化され、BIシステムへのデータ収集から最終的に構築されたダッシュボードまで、情報基盤全体のライフサイクルが可視化され、システムの複雑性の軽減とシステム展開期間の短縮が実現できるという。
BusinessObjects BI 4.0ではダッシュボードや検索、レポートなど個別の要件で個々に導入されていたBIツール群をフロント統合し、あらゆるデータに対して1つの環境で使いやすく、今まで以上により分かりやすいBIを使って情報活用を促進するとしている。BusinessObjects EIM 4.0は、同社の統合基幹業務システム(ERP)パッケージ「SAP ERP」などの基幹系システムからBIの対象となるデータをバックエンドで統合するとともに、データの正確性などを担保することで、エンドユーザーが社内のどこにどういう状態でデータが存在するかを意識することなく、BIシステムを活用できるという。
今回のBusinessObjects BIとBusinessObjects EIMはともに、同社のインメモリコンピューティングソフト「SAP High-performance ANalytic Appliance(HANA)」との連携することで、社内外に存在する複雑化した膨大なデータを高速で取得、分析できるようになっている。SAPが買収したSybaseのカラム型データベース(DB)「Sybase IQ」と連携することで、BIシステムの性能を大幅に向上させることもできるという。BusinessObjects BI 4.0は同社のデータウェアハウス「SAP NetWeaver Business Warehouse(BW)」との連携が最適化されたことで、従来と比較して5倍の高速処理が可能になったとしている。
今回の新版では構造化データはもちろん、従来からある文書やメールなど、ブログやTwitterなどのソーシャルメディアなども含めた、社内外に存在するあらゆる非構造化データも仮想的に統合できるという。企業横断型のデータを共通言語で統合管理できるため、IT部門とビジネス部門は、単一の環境でデータを分析、監視し、完全性や正確性、統一性の評価が可能になるとしている。
ITのコンシューマライゼーションにも意識を払っており、「iPhone」や「iPad」などのモバイル端末からリアルタイムにBIシステムにアクセスできるようになっている。「Sybase Unwired Platform」を活用することで、BusinessObjects BI 4.0では、モバイル端末にも包括的なBIのコンテンツを提供できるとしている。
SAPジャパンのバイスプレジデントである上野豊氏(ソリューション営業統括本部本部長)は、日本企業のBIシステムは「分断されていて、効果が見えない情報基盤になってしまっている」と指摘する。部門や用途ごとに個別採用されるBIやETLによって「高い運用コスト、異なる操作性による利用率の低下、教育コストの上昇、メタ情報管理の限界」といった事態になってしまっているという。
また、現状のBIシステムは「目的別に分断されてしまっており、データウェアハウスやデータマートは硬直化が進んでいる」とも指摘。これは「レスポンスを担保するために大量のデータマートが生成される」事態でもあり、そこから「大量のバッチプログラムが必要となる」とともに「リアルタイム性が欠如することにもなる」と、これまでのBIシステム全体の課題を明らかにしている。
BusinessObjects BIとBusinessObjects EIMの販売目標は、既存のBusinessObjectsパートナーとともに新規導入150社。HANAについては、新規パートナーとともに5社、新規導入で40社を目指す。BusinessObjects BIとBusinessObjects EIM、HANAの販売方針としては、SAP ERPの既存ユーザーをまず挙げる。
SAP ERPやSAP NetWeaver BWの既存ユーザーに対して性能改善をメリットとして勧めるとともに、SAP ERPをシングルインスタンスではなく、マルチサイトで活用しているユーザー企業の情報系システム統合策としても勧めていくとしている。これとは別に、BIフロントやDWHバックエンドを統合することで総所有コスト(TCO)を削減できることもアピールしていく。
業種別で見ると、非製造業として流通や小売り、金融などの企業にもアプローチしていく。上野氏は「SAP ERPは製造業に強いが、流通や小売り、金融などの企業は、情報を活用する度合いが高く、基幹系システムより情報系システムの方が大きい」(上野氏)と説明。そうした業種で大規模データを扱う企業に対して、高速アプリケーション基盤として勧めていく。モバイル端末との連携が強いことから、公益サービスのメンテナンス現場、店舗での業務が大半を占める流通や小売り、製薬や医薬の医薬情報担当者(MR)支援としてアピールしていく。
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