3月11日の東日本大震災の発生から1カ月が経過し、少しずつではあるが経済活動にも回復の動きがみられている。デジタル家電販売や、PC販売への影響は、3月の短期的な動きを見る限り、限定的なものだったようだ。BCNが発表したデジタル家電およびPCにおける販売動向調査からも、そのことがうかがえる。
BCNが全国23社2336店舗の大手家電量販店のPOSデータをまとめた同調査によると、被災日の3月11日から3月31日までの総販売金額は、前年同期比1.2%減と微減だったことがわかった。
薄型テレビに関して、3月の販売実績は、前年同月比9.8%減となっており、2010年11月のエコポンイトの駆け込み需要の影響を受けた2010年12月の34.7%減、2011年1月の25.4%減と比べて落ち込みは少ない。前年同期にも相当な台数の販売実績があったことと比較しても、旺盛な需要が続いていたと言っていいだろう。
一方、PCについては、3月実績が前年同月比4.8%減となった。ただし、インテルのチップセット不具合による春モデルの一部製品の発売遅れ、同調査のPCカテゴリで集計対象となっているスレートPC(タブレット端末)が、3月3日のiPad 2発表により買い控えられたこと、さらに当初計画されていた3月25日のiPad 2国内発売が延期されたことといった要素を考えると、地震による影響を考慮しても、PC需要は比較的旺盛だったといっていい。もし、iPad 2が予定通り発売されていたら、前年実績を上回る結果になっていた可能性もある。
BCNでは、「特に被害が大きかった宮城、福島、岩手に関しては、売上げ全体で前年同期比74.7%減と大幅な減少になっているが、北海道・東北エリアにおいては、BD/DVD/HDDレコーダーが前年実績を上回るなど、自粛ムードは限定的なものととらえることができる。震災の翌週をボトムに売り上げは戻り始めている」と分析している。
一方で震災の影響が出た製品もある。
販売が増加したという点では、UPS(無停電電源装置)が、3月14~20日の集計で前年同週比6倍以上の売れ行きになるなど、計画停電の影響で購入が増加。さらに、ワンセグテレビやワンセグチューナーでも特需ともいえる状況が見られているという。
しかし、デジタルカメラは、3月の販売台数実績で前年同月比16.8%減。販売金額では31.4%減と大幅に落ち込んだ。BCNでは「デジタルカメラは、おめでたいシーンで活用することが多いが、震災後に各種イベント中止や、自粛ムードの影響を受けて、利用するシーンが減ったことが販売にも影響したのではないか」とみている。
また、3月末はエコポイント制度の終了期限でもあったが、果たして、その影響はどの程度出ているのだろうか。
ジーエフケー マーケティングサービス ジャパンによると、2010年度(2010年4月~2011年3月)における薄型テレビの販売実績は、制度施行前の2008年度実績の2.6倍に達し、「薄型テレビにおいては史上最高の販売水準となった。薄型テレビの販売は、エコポイント制度の恩恵を最も強く受けた製品。2011年7月のアナログ放送終了を控え、旺盛な買い替え需要や、最大3万6000ポイントという高いエコポイント付与点数により、需要がさらに喚起されたと考えられる」という。
省エネ基準が厳格化される直前の2010年3月には販売数量が前年同月比2.6倍、エコポイント付与点数が半減される直前の2010年11月は前年同月比5.3倍と記録的な販売となった。
問題は制度終了直前の2011年3月だが、やはり地震の影響もあり、前年同月比1割減となった。それでも、制度開始前の2009年3月と比較すると2.3倍の実績となっており、「エコポイント制度は終了直前まで、薄型テレビの需要を押し上げた」と結論づけている。
BCNでも、「全体的には、エコポイントの終了に伴う駆け込み需要は空振りに終わったが、エコポイントの存在が、復興需要の初速に寄与しているともいえる。今後は、アナログ停波のタイミングに合わせて、サブテレビの需要拡大が見込まれるだろう。3月には小型テレビが好調に推移しており、20型未満の小型テレビでは、前年同月比35.5%増と旺盛な需要が続いている。今年後半には復興需要が顕在化し、7月のアナログ停波後も需要を下支えする可能性がある」としている。
エコポイント制度の反動によって、薄型テレビの需要が今後減速するのは既に折り込み済み。もちろん、東日本における今夏の供給電力の窮迫や、今なお頻発する余震など、予測を困難にする要素は多いが、それらを差し引けば、震災が日本の消費者心理に与える影響は、引き続き限定的であるとみることもできそうだ。
PC需要に関しては、企業のIT投資予算の凍結などが短期的にみられるだろうが、今後、SandyBridge搭載PCの増加などが、コンシューマー向けPC需要の拡大には追い風になる可能性もある。むしろ、PCや薄型テレビの需要増大が、経済復興の先駆けとなることを期待したいところだ。
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