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日本企業に活力を--オピニオンリーダーが語る、クラウド活用の心得(1)

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 2011年1月12日、メディア横断企画 クラウド討論会2011が開催された。実践フェーズを迎えたクラウドコンピューティングの現状と今後についてITアナリストとメディア首脳が活発なディスカッションを展開した。

ますます増加するクラウド導入企業

 2010年にIT業界で最も広範囲に話題となったキーワードの1つが「クラウドコンピューティング」だ。ITCリソースを持たないことで柔軟なシ ステム環境を実現し、投資や運用などの関連コストを大幅に削減するクラウドを積極的に導入する企業が増加してきているが、一方で、既存のICTリソースとの連携の可否やセキュリティやサービスレベルの問題などで不安視する企業ユーザーも少なくない。

 討論会はITRが発起人となり、5媒体の代表が参加。モデレーターをITRシニア・アナリストの舘野 真人氏が務めた。日ごろからそれぞれの専門分野で取材や情報収集に取り組んでいる主要メディアのオピニオンリーダーが集まり、「クラウド活用の現状はどう なっているのか」「ユーザーが抱える不安、不満をどう解消していくのか」「これからのクラウド活用とビジネス戦略がどう変化していくのか」といった点について討論するのが狙いだ。

活発な議論が交わされた「クラウド討論会2011」
【モデレータ】
舘野 真人 (アイ・ティ・アール シニア・アナリスト)(左から3番目)
【パネリスト】
左から:
別井 貴志 (朝日インタラクティブ CNET Japan編集長)
大谷 イビサ氏 (アスキー・メディアワークス TECH.ASCII.jp 編集長)
右から:
星野 友彦氏 (日経BP コンピュータ・ネットワーク局ネット事業プロデューサー 兼 日経コンピュータ編集プロデューサー)
田口 潤氏 (インプレスビジネスメディア ITLeaders 編集長)
浅井 英二氏 (アイティメディア ITインダストリー編集統括部長)

導入済み企業はさらなる積極活用を模索

 まずモデレーターの舘野氏から、今回の討論会に備え、企業の情報システム関連担当者の方々に対して行われた事前アンケート(実施時期は2010年12月下旬。全有効回答数:419件)の結果が発表された。

 このアンケートによると、現時点におけるクラウドコンピューティングの利用率は約3割で、利用形態は、SaaSが中心ながら、PaaS/IaaSも浸透しつつあることが分かった。

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 また、ITRとITmediaの共同調査の結果からも、前年より利用率が高まっていることが舘野氏から示された。この調査は2009年度と翌 2010年度の2度にわたって行われているが、2009年度にパブリッククラウドの利用状況について「現在利用している」と答えたのは全体の19.0%。 これに対して2010年度では31.1%に増加している。また「利用計画はない」という回答が2009年度では34.0%だったのに対し、2010年度で は23.6%と減少している。

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 「こうした回答を見ても、クラウドに対する関心は非常に高まっているといっていいだろう。しかし、同時にセキュリティ面で不安を感じている人たちも少なからずいる。また、パブリッククラウドの場合、自分たちで運営をコントロールできない不安も出ているようだ」(舘野氏)

 とはいえこの調査では、こうしたクラウドに対するさまざまな不安は、2009年度に比べて2010年度ではほとんどの項目で軒並み10%以上減少している側面もある。これについては「いったんサービスを利用し始めると、『意外と使えるな』という安心感が出てくるのかもしれない」と舘野氏は話す。

 このことは事前アンケートでも明らかになっている。具体的に利用計画を策定する企業は全体の20%を超える中、クラウド未利用企業では、関心や将 来的な利用は想定するものの、具体検討は10%強にとどまる。一方、既にクラウドを利用している企業の約44%は新たな追加・更新導入を具体検討している 結果となった。未利用企業の段階ではどうしても慎重になるが、いざ利用を開始すると、ある程度の不安は払拭され、積極利用に転じる格好となるようだ。

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「クラウドって何?」というユーザーも

 こうしたクラウドに対する認識、利用状況について、日経BP コンピュータ・ネットワーク局ネット事業プロデューサー 兼 日経コンピュータ編集プロデューサーの星野友彦氏は次のように話す。

 「日経BPで行った最近の調査で、クラウド事業者に対する要望で、『セキュリティを高めて欲しい』という回答が全体の約30%、『クラウドという のはどんな仕組みなのかを明らかにしてほしい』という回答が50%という結果が出ている。具体的な不安もさることながら、まだまだ、クラウドって何なんだというユーザーが多いのも現実だろう」

 これについてはアスキー・メディアワークス TECH.ASCII.jp 編集長 大谷イビサ氏も同意する。

 「クラウド関連の大きなイベントで取材をした時、一番人気のあるブースはどれかを聞くと、『クラウドとは何か』というような初歩的なレクチャーを してくれるブースに人気が集まったというのを聞いて、少し驚いたのを覚えている。そうしたイベントにわざわざ参加する人でさえ、まだ、そもそもクラウドと は、ということを知りたがっている」

 また朝日インタラクティブ CNET Japan編集長 別井貴志は、こうした現状についてこう指摘する。

 「利用者もどんどん増えているが、一方では知識レベルでもまだクラウドに対する認識が薄い人がいるというのは、ある意味分かりやすい結果だと思 う。問題はユーザーがクラウドを具体的にどう利用したいのかを明確にしなければならなくなる時期が早晩やってくるということだ。低コストという面だけに着 目してパブリッククラウドを一時的に活用しようとして失敗してしまうケースもよく聞かれる。また海外の事業者が運営するクラウド基盤を活用することもリス クが伴う。そうしたリスクや不安を考慮した上で、ビジネスに最も有効なICT基盤をクラウド活用でいかに構築していくかは、どの企業も取り組み始めたばかりだと思う」

 企業システムでのクラウド活用が始まったばかりの現状では、現在活用しているユーザーと初歩的な知識を得ようとしているユーザーの間にそれほど差はない。自社に合った活用術を身につけられるかどうかで今後差が付いてくるということだろう。

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