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CDMA版iPhoneが日本市場に与える影響は?--独占販売を自ら崩したアップル

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 AppleはVerizon Wireless向けとなるCDMA2000対応「iPhone 4」を正式に発表した。これでAT&Tが2007年以降独占販売を行っていた北米市場で、複数の通信事業者からiPhoneが発売されることになる。だが、欧州やアジアでは2009年後半からiPhone販売の“マルチキャリア化”が進んでおり、iPhoneを欲しい消費者は料金やサービス内容に応じて自分の好みの通信事業者と契約することができるようになっている。

 日本ではソフトバンクモバイルが「iPhone 3G」以降、Appleのモバイル製品を一貫して扱っている。NTTドコモからの販売話も噂や憶測が流れたものの、現在はMVNOである日本通信が海外輸入品を扱うという裏技的な状況で利用できる状況になっている。但しアップルジャパンの正式発売品ではないため、これは他国の複数事業者販売とは異なる状況だ。

CDMA2000陣営は多くの加入者を抱える“ビッグキャリア”

 AppleはiPhoneの新製品を毎年1モデルとしている(メモリ容量と本体カラーは除く)。これは、コスト削減はもちろんのこと、事実上の世界標準といえるW-CDMA/GSM方式に対応した1モデルだけで全世界に販路を広げることが可能だからだ。これに対してCDMA2000陣営から対応を希望する声が聞かれていたが、マーケットシェアやコストを考えると製品化は困難だったと考えられる。ちなみに、モバイル業界団体のGSM Association(GSMA)によればW-CDMA/GSMとCDMA2000の全世界における市場シェアは2009年時点で96対4と圧倒的な差がついている。W-CDMA/GSMはほぼ全世界をカバーしているのに対し、CDMA2000はヨーロッパなど空白地域が多いのが実情だ。

 だがマーケットシェアで劣っているとはいえ、CDMA2000陣営には多くの加入者数を誇る“ビッグキャリア”も多い。今回CDMA版iPhoneを販売するVerizon Wirelessは約9300万で北米シェア1位であるし、同3位のSprint Nextelは約4800万と日本のauの約3200万よりも多い。さらに中国のChina Telecomはまもなく9000万の加入者数となる見込みである。ここに挙げた4社だけでも実に2億6300万ものCDMA2000利用者がいるわけだ。AppleとしてもCDMA版iPhone 4は製造コストが上がるだろうが、今後さらにiPhoneの販売台数を増やすためにもこれだけ多く存在するCDMA2000ユーザーを無視したままでいるのは損失だろう。

「通信事業者独占販売」というビジネスモデルを放棄したアップル

 しかしAppleがCDMA版のiPhoneを市場に投入する理由は、単純に販売台数の増加を見込んでいるだけではないだろう。これまで消費者はiPhoneを購入する際に通信事業者の通信方式を気にする必要があり、一方CDMA2000採用の通信事業者にとってiPhoneは無縁の製品だった。だが今後はあらゆる通信事業者がiPhoneを販売する機会を得ることになり、消費者も通信方式の差を気にする必要がなくなる。CDMA2000版iPhone 4登場の意味は、iPhoneが特定の通信事業者や通信方式のみに対応する製品ではなくなったということなのだ。これはAppleが築き上げてきた「通信事業者独占販売」というビジネスモデルを完全に放棄した、ということではないだろうか。

 そうなれば日本市場においても今後、AppleはiPhoneのさらなる拡販に向けてソフトバンクモバイル以外の事業者とも、より密接な関係を築こうとする動きが出てくるかもしれない。特に日本では各通信事業者がスマートフォンシフトを進めており、今後はiPhoneに対抗しうる製品も増えてくるだろう。すなわちAppleが日本市場で優位性を保ち続けていくためには今以上の拡販は必須なのである。CDMA版iPhone 4の登場により、Appleと日本の通信事業者の関係が今後変化していくことも考えられそうだ。

山根康宏

携帯電話研究家

メーカーの香港駐在員時代に海外携帯電話に興味を持ち、2003年に独立して現職となる。香港を拠点にフリーランスとして活動中で、世界各国の携帯電話事情を日々追い求める毎日である。日本と海外の携帯電話ビジネスの違いなど、海外在住者ならではの視点による記事やコラム、書籍などをオンラインメディアなどに執筆している。また海外進出を考える企業向けにコンサルティング活動も行っている。

2001年から本格的に収集を開始した海外携帯電話のコレクションは600台を越える。香港に私設の海外携帯電話博物館(仮称)を設置するほどの携帯電話好きでもある。展示会取材などで世界各国を回る際も現地で携帯電話を実際に購入してみるなど、各国の体験レポートなども得意としている。個人サイトは「香港携帯情報局」。

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