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スマートフォンの普及で市場は変わる--山根康宏が見る日本のSIMロック - (page 2)

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SIMロック解除のメリット、スマートフォンの普及で変化

 さて日本でもSIMロック解除の動きが出始めており、2010年7月にはNTTドコモが2011年4月以降に出荷する製品を基本的にSIMロック解除可能なものにしていくとアナウンスを行った。だが前述したように日本の携帯電話は「通信事業者専用品」であることから、ロックを解除しても他事業者で利用できるのは音声通話くらいとなってしまう。日本では必須のサービスである携帯メールも利用できず、SIMロック解除のメリットはほとんどないと見られていた。だが日本の携帯電話がスマートフォンへと移行を始めたことで、SIMロック解除の意味合いも大きく変わりそうである。

 たとえば、現在日本で販売されているスマートフォンの約半数は海外メーカーの製品である。海外で販売されている製品をそのまま日本語対応させた製品も多く、SIMロックと製品ロゴの有無以外は海外品と同一のものも増えている。海外メーカーのスマートフォンは「おサイフケータイ」や「ワンセグ」といった日本固有のサービスには対応していないが、このことは逆に言えば通信事業者固有のサービスに縛られていないということだ。つまり日本で販売されている海外メーカーのスマートフォンのSIMロックを解除すれば、他通信事業者のSIMカードを装着しパケット通信設定を行うことで音声通話やフルブラウザによるウェブサービスの利用が可能になる。このように通信事業者専用端末ではなく、メーカー端末であるスマートフォンであればSIMロック解除は有用なわけだ。

 しかもNTTドコモはスマートフォン上でiモードメールを利用できる「spモード」サービスの提供を開始し、同社専用端末以外でもメールの利用を可能にしている。spモードはソフトウェアで提供されていることから、今後は各メーカーが開発したスマートフォン上で自由に利用できるようになるだろう。すなわちiモードメールはNTTドコモ端末だけで利用できるサービスではなく、利用端末を選ばないサービスになっていくだろう。

 NTTドコモ以外の通信事業者はSIMロック解除に対して肯定的な動きは見られず、ソフトバンクモバイルは大黒柱ともいえるiPhoneを手放したくないこともありロック解除を行う動きは今後も進まないかもしれない。だがすでにNTTドコモのMVNOである日本通信が海外版のiPhoneを日本で利用するためのSIMカードを提供するなど、端末独占販売のメリットにも横穴が開き始めている。

 また最近は、台湾や中国製のAndroidタブレット端末が海外で急増しているが、これからは技術基準適合証明を取得して日本で販売される製品も増えていくだろう。海外メーカーのみならず日本メーカーのさまざまなスマートフォンが増えてくれば、"iPhone一人勝ち"の状況も今後大きく変化していくだろう。SIMロック解除は、従来の日本式携帯電話ビジネス環境の中では意義があまり見出せないものだったが、スマートフォンが主流となれば消費者側からもその要求が高まっていくと思われる。

日本でも、新品、中古、SIMロック、ロック解除品などが選択可能に

 通信事業者側も今後は端末の開発を事業者中心からメーカー中心へとシフトさせ、スマートフォン上で利用できるサービスの開発に注力すればコストを削減することもできる。通信事業者が新しいサービスを提供するためのハードウェア開発を行う必要がなくなれば、今のように次々に新機種を開発し、それを消費者に定期的に買い換えてもらう必要もなくなる。通信事業者は端末の販売ではなくサービスの提供に特化できることになり、そうなれば海外のように通信回線=SIMカードと端末を分離して提供し、日本メーカー品、海外メーカー品、新品、中古品、SIMロック品、ロック解除品、などさまざまな端末を消費者が選択することも可能になっていく。つまり端末と回線が分離された海外と類似した状況になれば、SIMロック解除への動きは自然なものにもなっていくだろう。

 もちろん端末には日本固有のサービスへの対応も必要かもしれない。だがワンセグについてはLTEが開始され高速常時接続環境が一般的になればストリーミング放送で代替できるだろう。おサイフ機能もGoogleはAndroidの次のバージョンでNFCを搭載しており、Nokiaも一部機種での搭載を表明している。メーカーブランドの端末にNFC搭載が進めば日本で独自の端末を開発していく必要性もなくなっていくだろう。その結果端末メーカーも日本の各通信事業者向けに加え海外向け、と製品を作り分ける必要はなくなり、1機種を開発するだけで全世界へ販売することも可能になる。すなわち日本メーカーの海外進出のためにも、通信事業者固有のハードウェアではなくソフトウェアでサービスを提供することは有用なのだ。

 スマートフォンへのシフトは世界的な傾向であり、日本もその流れから逃れることはもはや不可能である。そしてスマートフォンの普及は端末とSIMカードの分離を促し、結果として日本のサービスや端末が海外へ出ていくことを後押しするはずだ。自社の顧客を縛るという閉じた世界ではなく、自由に競争できる環境の中で競争を行うことが日本の通信ビジネスの国際競争力を高めるものになっていくのではないだろうか。

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