2010年7月、NTTドコモが携帯電話を特定の通信会社でしか使えないように制限する「SIMロック」を解除する方針を固めたと発表し、話題を呼んだ。さらに、NTTドコモの通信回線でサービスを展開するMVNO(Mobile Virtual Network Operator)の日本通信は、SIMフリー端末向けにSIMカードの販売やSIMフリー端末の販売網を強化するなど次々に新戦略を発表し、注目を集めている。
香港に在住し、携帯電話研究家として各国のモバイル事情を取材する山根康宏氏には、日本のSIMロックをめぐる動きはどう映るのか。
日本で販売される携帯電話も、気がつけば高機能携帯電話、すなわちフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が急速に進んでいる。2010年10月に行われたNTTドコモ、ソフトバンクモバイル両社の新製品発表会でも最初に紹介されたのはスマートフォン製品群で、量販店ではスマートフォンが店頭の目立つ位置にずらりと陳列されている。端末メーカーはスマートフォンへの製品シフトは必須であり、まだ国内で製品をリリースしていないNECカシオモバイルコミュニケーションズ、パナソニックらも2011年以降にスマートフォン製品を国内外市場へ投入することを発表している。
従来、日本の携帯電話は通信事業者と端末メーカーが共同で製品を開発していくことで新機能やサービスを消費者に提供してきた。すなわち携帯電話端末は通信事業者が他社と差別化を図るための製品であり、各社ごとに異なる端末が開発されている。シャープのように各通信事業者に類似した製品を投入している例があるものの、基本的には日本の端末は通信事業者専用品であり、各社間で共通して利用できる製品はない。このように通信事業者専用となっている日本の携帯電話にはSIMロックがかけられており、同じ通信方式のNTTドコモとソフトバンクモバイルの間で端末を共用することはできない。そして通信事業者の専用品であることから、SIMロックを解除するという概念もないのである。
一方、海外市場では、米国や韓国を除けばほぼすべての国で販売されている携帯電話はメーカー端末であり、サービスもメーカー端末の上に通信事業者が個別に搭載している。すなわちサムスン電子やHTCといったメーカーの同じ製品を各通信事業者が販売しており、事業者専用の端末はほとんど見ることはできない。
通信事業者が端末を販売する際は、端末に自社ブランド名をプリントしてサービスにアクセスするためのアプリケーションをプリインストールすることが一般的だが、端末そのものはメーカーが販売する汎用品である。そのため各通信事業者は端末を割引販売するために自社の都合でSIMロックをかける。そして1年や2年という契約縛りが終わった後は、元のメーカー端末として利用できるようにSIMロックを解除するのである。
このように海外市場では端末とサービスは分離した概念で携帯電話は販売されている。つまり本来は端末と通信事業者の回線=SIMカードの組み合わせは自由であり、通信事業者も各メーカーの端末上で利用できるようなサービスを開発しているのだ。例えば英国のVodafoneで利用していたNokiaの携帯電話を、SIMロック解除後に同じ英国のT-Mobileに持ち込めばT-Mobileの各種サービスを利用することができる。海外の端末メーカーが世界中で端末を販売できるのも、このように端末は共通規格品として各国の通信事業者で自由に利用できるからである。
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