無接点充電の国際標準規格化団体であるWireless Power Consortium(WPC)は12月2日、日本初の記者会見を開催した。無接点充電の標準規格「Qi(漢字表記は「気」、読みは「チー」)」の現状や取り組みについて話した。
WPCは、2008年12月に設立された業界団体だ。11月時点のメンバーは67社。磁気誘導技術をベースとした低消費電力向け標準規格Qiの普及促進などに取り組んでいる。
Qiは、7月に規格書が完成し、8月には初の製品群がQi規格認定を受けた。現在の規格は5Wの低電力向けだが、すでに最高120Wの中電力向け規格書の策定作業も開始している。インターフェースの規格はオープンなためWPCのウェブサイトから無料でダウンロードができる。
WPC会長のMenno Treffers氏は「無接点充電市場の成長はすでに始まっている。業界標準がなければあくまでニッチな市場にすぎないが、標準化されることで、軽く数億の製品が出てくるだろう」と予測した。
発表会場には、三洋電機 モバイルエナジーカンパニー充電システム事業部事業部長の遠矢正一氏と、NTTドコモ 移動機開発部技術推進担当課長の金井康通氏が出席。ゲストスピーカーとして、両社の無接点充電に関する取り組みなどを述べた。両社は10月に開催された「CEATEC 2010」の会場で、WPC方式を採用した無接点充電端末の試作機を出品している。
日本企業では唯一のWPCレギュラーメンバーである三洋電機は、2007年から無接点充電のコンセプトモデルを発表するなど、この市場に積極的に取り組んできたメーカーの1つだ。WPCに参画する際は「フリーポジショニングを開発テーマに挙げることを約束した」(遠矢氏)というほど、どんな置き方でも充電できる新しい充電スタイルを作り出すことにこだわったという。
現在試作機として発表されているのは、既存サイズまま無接点充電技術を組み込んだ電池パックと、フリーポジショニング機能を備えたシステムだ。
「現在は、携帯電話やスマートフォンなどを対象にした5Wの規格だが、ポータブルCDや電動工具などにも充電できる120Wの開発にも着手している。将来的には電気自動車など、1kwのハイパワーなものへも展開していきたい」(遠矢氏)と話す。
三洋電機では、ACアダプタやクレードルを用いた充電スタイルを無接点充電へと進化させ、オフィスや商業施設、ホテルなどで充電ができる「チョイより充電」を社会インフラとして展開していきたいとしている。今回発表した試作機のほか、テーブルに無接点充電パッドを内蔵した「ワイヤレス・チャージングテーブル」なども開発済みだ。
一方、2005年以降無接点充電の端末を試作してきたNTTドコモは、置くだけで充電できるという利便性、コネクタ不要による端末の薄型化、耐久性の向上などを携帯端末のメリットとして挙げている。
過去の試作では、2GHz、800MHz、1.7GHzの3つで受信感度劣化を調査したほか、FeliCa、ワンセグ、GPSなど各種アンテナへの干渉、方位センサ、開閉センサなどへの干渉、使い勝手などを調査してきたとのこと。
その結果「普及するには、互換性と位置合わせをする必要のない(フリーポジショニング)の充電端末が不可欠である」(金井氏)という結論に至ったとしている。
発表会場では、Qi規格に準拠したプロタイプが展示されており、実際に充電するデモンストレーションも実施された。商品化に関しては早いもので2011年としている。
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