ビルコムは11月4日、中国のデジタルマーケティング企業である上海億目広告と経営統合すると発表した。2011年4月以降に上海にビルコムの100%子会社「BILCOM China」を設立し、上海億目広告のデジタルマーケティング事業をBILCOM Chinaに事業譲渡する。
今後は、中国国内のソーシャルメディアを活用したデジタルソリューションの制作や、中国の有力ネットメディアとの独自枠(コンテンツ)の開発を進めていく。さらに国内のEC企業向けに、中国における商品の発注から発送までをトータルに請け負うフルフィメントサービスも提供するという。
今回の経営統合を通じて、「アジアにおけるデジタルコミュニケーションのハブになる」と語るビルコム代表取締役社長の太田滋氏に、統合の背景や日中間の文化の違いなどについて聞いた。
太田氏と上海億目広告の法人代表Anthony Known Lee氏は、太田氏が米国Spiral&Star U.S.Aに勤務していた2000年から親交があり、すでに10年来の仲だという。「両社が統合することで日中間の文化や価値観の違いを超えたデジタルマーケティングが可能になると判断しました。彼とはビジネスにおけるメリット、デメリットだけでなく、人生観や長期的なビジョンなども共有しています」
太田氏は日系企業の多くが中国でのデジタルマーケティング(ソーシャルメディアプロモーションやネット広告)に苦戦していると話し、その原因を中国の「消費者インサイト」と「ソーシャルメディア」への理解が足りないためだと指摘する。
消費者インサイトの違いから、日本で成功したプロモーションのクリエイティブやメッセージをそのまま中国で展開しても効果は薄く、中国の生活者のインサイトを捕らえたうえでのプロモーションを考える必要がある。また、日本ではTwitterやmixi、YouTubeが日常的に使われているが、中国では政府の規制によってこれらのサービスにはアクセスできない。一方で中国では「人人網」や「開心網」など独自のソーシャルメディアが発達している。
「CMや屋外広告ならお金を出せば出稿できますが、ソーシャルメディア使って口コミを起こすなど、消費者を巻き込んだプロモーションを展開するには中国のメディア環境と生活者のインサイトを理解する必要があります。そのノウハウを持っているのが上海億目広告だと考えています」
しかし中国と言えば、避けて通れないのが尖閣諸島問題による昨今の日中間の緊張関係だ。このような状況で日系企業が中国へデジタルマーケティングを展開しても、投資に見合った効果は得られるのかと不安を抱く企業も多いのではないだろうか。
この疑問について太田氏は、政治が不安定であってもビジネスや生活者のコミュニケーションに大きな変化はないという見方を示す。
「地方で反日感情が高いことは留意しなければなりませんが、それは限定的で、上海や北京の消費者インサイトにそこまで影響はないと考えています。政教によって戦略を変えてく方針は基本的にありません」と、楽観的ではなくあくまでも現実的に考えていると説明する。またグローバルな視点で、中国と日本の生活者を幸せにするコミュニケーションビジネスを展開したいと語った。
太田氏は、3〜4年後には国内と海外の注力比率を1対1にしたいと話す。また中国を皮切りに、北京や広州、台湾、韓国などにもビジネス展開したいと意気込みを語った。
「日本だけ、中国だけではなく、アジア全体にデジタルコミュニケーションサービスを提供していきたいと考えています。その第一歩となるのが中国です。これまで日系企業が実現できなかったような取り組みを、慎重かつ大胆に推進していきたいと思います」
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