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求めるのは「高い志」、報酬は100億円--ソフトバンクアカデミア開校

坂本純子(編集部)2010年07月29日 22時33分
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 ソフトバンクは7月28日、ソフトバンクグループ代表である孫正義氏の後継者の発掘と育成を目的とした「ソフトバンクアカデミア」を開校した。汐留のソフトバンク本社で行われた開校式には、入校を志願したソフトバンクグループの社員およそ1000人が参加した。

  • 集まったソフトバンクグループの社員たち

 孫氏は、6月に開催した「新30年ビジョン発表会」で、“孫正義2.0”を作るソフトバンクアカデミアを7月に開講すると明言していた。

 28日から開始した入校の登録者は、18時間で社内から1000人、社外からは3700人にのぼるという。開校式では「戦略特別講義:孫の二乗の兵法」と題し、およそ2時間20分にわたって「校長」である孫氏が講義を行った。なお、講義の内容は、リアルタイムでUstream配信されたほか、PCiPhone向けにアーカイブが用意されている。

「時空を超えた合作」、25文字の「経営指針」

 この日のテーマである孫の二乗の兵法は、主に孫子の兵法、孫正義氏の経営の実践を合わせた「時空を超えた合作」と孫氏は表現する。異なる筆者による「孫氏の兵法」を30冊以上読み、熟考したという。

  • 25文字の「経営指針」。上から横に読んでいく

 25文字で構成される「経営指針」は、孫氏の言葉と孫正義の独自の言葉を重ねたもので、今後の講義で孫氏が20〜30年間かけて伝授していくことの「結論」だという。「結論を1ページで表せと言われたらこの表になる。先に結論を言うのが、ソフトバンクアカデミア方式」と語った。

 この指針は、孫氏が病で倒れた26〜27歳の頃に作ったもの。この指針をもとに成功のための要因を極めていくとした。上から順に重要な意味を持つという。

 孫氏は「物事には重要な順番があり、大事なものから常に頭に入れておく。交渉の時など、瞬間的に意志決定しなければならないとき、その順番で意志決定するときのチェック項目にする」とした。

  • 「校長」として講義した孫正義氏

 この25文字について、「常に試練にぶち当たったとき、常に中長期の戦略を考えるときに思い出し、25の成功要因に、ちゃんとマッチしているかどうかを自問自答している。しかし、私自身まだ極めきれていない。ある意味これは永遠のテーマ」と話す。

 「僕自身は、すべての文字、すべての意味を腹の随まで入れている。後継者となるみなさんにも、この25文字は、言われなくても思い出さそうと思わなくても、体の中にそのまま入っているというようになってほしい」と重要性を語った。

 講義では、文字が持つ意味について、どう考えるかを1文字ずつ受講生に問いかけた。それを受けて、受講者らが手を挙げて積極的に発言。それらを踏まえて孫氏が自らの経験などを織り交ぜ、具体的な例を挙げながら自身の持つ答えを話した。

明かされる事業戦略エピソード、孫氏の交渉術

  • 熱い講義に真剣に耳を傾ける受講者

 例えば、「流」という文字について、受講者からは「時代の流れを作る」「常に流れを読む」「川の流れのように、澱まず流れ続ける」「流れに乗るための基盤をつくる」「一流と組む」「流れを大切にする」といった意見が上がった。

 孫氏は、「ほとんど合っている。時代の流れに逆らっちゃいけない」と切り出した。

 「流れとして、デジタル情報産業の中でどのOSを選ぶかはものすごく重要」とし、かつて富士通が、PCのOSとして「CP/M」を選んだ当時の担当役員に「馬鹿じゃないか。なぜMS-DOSを選ばないのか」と議論を仕掛けたエピソードを明かした。

 「よくコンサルタントは『ニッチ戦略をとれ』言う。『孫さんはニッチの産業を選んだからうまくいってラッキーだったね』という人がいる。馬鹿だと。ニッチな産業を選んだことは一度もない。いまその産業は小さくても、5年後、10年後、30年後にメインになるところを選んできた。浮き草を追うようなのは事業家と言わない。単なる流行の追っかけやさん。早とちり」と熱く語る。

 「OSを選ぶときもそうだが、通信で言えば通信方式も重要。CDMA2000、1X、WINとか選んだ人がいるが、悲しいばかりの失敗だ。ニッチで、最後までメインストリームになれないところを選んでしまった。それは戦略の失敗」と競合する通信会社をバッサリ斬った。

 「安く買える、組みやすい、だから組みやすい相手と組みました。安く買える相手を選びました。──それは、ニッチの枝葉に自らのグループを追いやる危険性がある」と警告する。一方で、こんな例外発言も飛び出した。

 「一時的に小さくても、追い払ってはぎ取って、ダントツ1位になれる自信がある時はいい。ボーダフォンジャパンが負け犬で沈みゆくという状況でも、ひっくり返して最後はナンバーワンになるという自信があり、その腹をくくった状況なら、それは一時的なドンジリ。それはまだ許せる。安いから買う。組みやすいから組む。これではいかんということ」。

 「林」の解説では、水面下の交渉の重要性を解く。27日に発表したヤフーとグーグルの提携について、「半年以上も前から交渉してた、というのは知らないでしょう。ほとんど毎週、ずーっと交渉してた。アップルのiPhoneもそう。ドコモやauの社長がいろいろマスコミで言っていたけれど、今から数えて6年ぐらい前から交渉を開始していた。知らんかったでしょう?深く、静かに、超極秘で水面下の交渉」と説明した。

 孫氏は、このように1文字ずつ25文字すべての文字について経験を踏まえて熱く語り、人々を惹きつけた。

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