そのシーンを観ると、実写だと思えてしまう。ゴミは施設内のかすかな光を受けて反射する。観客は多くのゴミの細部まで確認できる。そして、ゴミの数は膨大だ。少し気持ちの悪い映像ではあるが、驚くほど複雑で入り組んだシーンだ。
Anderson氏によると、単にPixarにはそのシーンを手で描く資金も時間もなかったため、スーパーバイジングテクニカルディレクターのGuido Quaroni氏とそのチームは、同スタジオのコンピュータを使って無数の小さなゴミにプロシージャルアニメーション処理を施し、可能な限りリアルに見せる方法を考案しなければならなかったという。
また、映画の中で重要な役割を果たすたくさんの巨大ゴミ袋のアニメーションについても、同じことが当てはまるとAnderson氏は言う。視聴者が映画に集中できるように、リアルに見え、本物と同じように光を反射し、さらに視聴者に違和感を与えないゴミ袋を表現する必要があった。
「こうした有機的な形を表現するのは本当に難しい。(ゴミ袋は)圧縮されて、ゴミ収集車から降ろされ、ベルトコンベアで上に運ばれる。そして、ゴミは無数の細かな断片に切り刻まれ、映画のキャラクターたちはゴミの山の上を走り回る。こうしたシーンを手で描くのは不可能だろう」(Anderson氏)
そのシーンはテクノロジを活用して表現する必要があった。
「カールじいさんの空飛ぶ家」では、同作品を象徴するシーンの1つに対して、画期的なコンピュータ処理が施されている。鮮やかな色の数千個の風船のシーンがそれで、このシーンは「カールじいさんの空飛ぶ家」のほぼすべての宣伝用媒体に採用されている。一方、「トイ・ストーリー3」のゴミ処理施設のベルトコンベアのシーンがポスターに掲載される可能性は低い。しかしAnderson氏は、ゴミ処理施設のシーンのストーリーにおける重要性を考えると、Quaroni氏とそのチームが同シーンに必要なテクノロジを完成させたことの意義は、「カールじいさんの空飛ぶ家」の風船に何ら劣るものではないと説明する。
「あのシーンは『トイ・ストーリー3』の中で最も感情が高まるところだ。そのため、あのゴミのアニメーションはどのようにして作られたのか、ということは考えてほしくない。観る人がキャラクターと一体になり、彼らの視点からキャラクターと同じ感情を体験してほしい」(Anderson氏)
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