ドワンゴは5月13日、ニコニコ動画事業が2010年9月期第2四半期(1〜3月)で黒字化したと発表した。有料会員が80万人近くに増え、安定収入を得つつインフラコストの増加を抑えられたことが主な要因。2009年12月時点で単月黒字化していたという。
第2四半期におけるニコニコ動画事業の売上高は14億2800万円。このうち、プレミアム会員と呼ばれる有料会員からの利用収入が10億8200万円、広告収入が2億1300万円、「ニコニコ市場」などのアフィリエイト広告収入が5300万円、ニコニコ動画などで使えるポイントの販売等の売り上げが8000万円となった。一方、費用は13億9900万円となり、2900万円の黒字になった。
「ユーザー投稿型の動画サービスで黒字化というのは、世界でも聞いたことがない。世界初に近いのではと考えている」(ドワンゴ取締役の夏野剛氏)
ニコニコ動画が黒字化したのは、有料会員収入と広告収入が両輪で支えている「ハイブリッド型」のためと夏野氏は分析する。有料会員数は4月末時点で77万2000人。ドワンゴ代表取締役社長の小林宏氏によると「数日中に80万人に達する。有料会員数は右肩上がりで伸びており、伸び率も上向いている」とのこと。ユーザーが動画生中継できる「ニコニコ生放送」が有料会員数の伸びを牽引しており、ニコニコ動画の新機能や新サービスが一般利用者よりも先に利用できる点もユーザーから支持されているという。
「プレミアム会員の解約率は非常に低い。毎月のように新しいサービスやネタ、イベントを自社開発で投入しており、新機能が使えるなどの優位性がプレミアム会員を引きつけている」(夏野氏)
なお、単月での黒字化を達成したのは2009年12月とのこと。有料会員収入に加え、広告収入が好調だった。しかし景気低迷期のため広告収入は「月によって倍以上の差がある」(夏野氏)と不安定なため、2010年1月には再び単月赤字に。3月に再度単月黒字化を達成したことで、四半期としても黒字化した。
なお、2010年9月期通期では、若干ながらまだニコニコ動画事業は赤字となる。今後は黒字基調を維持しながら拡大路線をとるため、累積損失の黒字化については「現在のところ、話せる段階にない」(夏野氏)とのこと。たとえば、ニコニコ生放送には月間1億円の費用がかかっているといい、「これがなければすぐ黒字になるが(笑)、新規の有料会員獲得につながっているところもあるので、継続していく」(夏野氏)と、投資継続に意欲を見せた。
また、ニコニコ動画事業の黒字化に伴い、海外展開にも力を入れる。「サービスそのものには優位性があると考えている。どういう形で、どの市場に出るかを見極めている段階だ。(現地の企業に)ライセンスして運営する場合もあれば、自社で直接運営する場合もあるだろう」(夏野氏)。すでに複数社から協業の話が来ているというが、具体的な話をしている段階にはないとした。
なお、ドワンゴの2010年9月期上半期(2009年10月〜2010年3月)の業績は、着うたフルなどのモバイル事業のコスト削減などにより、売上高が前年同期比21.8%増の160億9000万円、営業利益は同186.4%増の11億8100万円、純利益は同297.1%増の8億6700万円となった。
また、通期の業績見通しについても修正している。着うた等の売り上げが見込みを下回るものの、著作権使用料の減少や採用計画の遅れに伴う人件費の抑制などにより、増益となる見通し。売上高は前期比11.7%増の297億円、営業利益は同227.4%増の13億円、純利益は18億8200万円改善し、11億円の黒字に転換すると見ている。
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