急激に加速する米国スタートアップ企業への大型増資やM&A

北村充崇(JAIC America)2010年05月06日 11時39分
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 一部のメディアでも話題になったが、4月以降はシリコンバレーの景気回復を肌で感じるようになってきた。エンジニアの友人にはリクルーターからの連絡が増えており、大企業だけでなくベンチャーの求人も増えてきていると言う。天気だけでなく、町も少しずつ活気づいていきたようにも感じる。

 全米ベンチャーキャピタル協会(National Venture Capital Association:NVCA)によると、2010年第1四半期は111社のベンチャーキャピタル投資先の買収があったという。これは、2007年以降で最大の件数である。中でもインターネット関連企業は81社と、一番ホットな領域となっている。その象徴は弊社の投資先であるAardvark.comも買収したGoogleだ。2010年に入り8社を買収しており、中でも4月には計4社を買収している。

 M&Aが多いということは、まだベンチャーの時価総額が高くなく、バイヤーである大企業にとっては安価に技術と人を買い占めるチャンスであるといえる。また一方では――弊社もそうであるが――投資するベンチャーキャピタルも起業家も資金を最小限に抑え早期売却する低消費モデルが増えている。そのような会社であれば、低い値段でも十分な投資リターンがある。

 ベンチャーキャピタルの新規投資への姿勢もここ1〜2カ月で急激に前向きになってきたようにも感じる。実際に2010年1〜3月の第1四半期のベンチャーキャピタルの投資は、前年同期よりも1.4倍近い額となり件数も増えている。もちろん前年同期が厳しい時期であったが、2010年に入ってからは、著名銘柄のGroupOn(約1.3億ドル)、シリーズAで2009年末にサービスを開始したBlippy(約4200万ドル)、まだユーザーの少ないQuora(約8600万ドル)など、2009年では想像できない時価総額での増資に成功している。 我々が投資をしている設立1年未満の“赤ちゃん”のようなネットベンチャー企業にも大型増資やM&Aの話が持ち込まれ、この1〜2カ月で雰囲気が180度変わったように感じる。

 また4月中の話題と言えば、米国で発売されたAppleのiPadに触れざるを得ない。米国でもiPhoneの発売時ほどの盛り上がりを感じなかったものの、テレビでもPCでも携帯電話でもない新しいスクリーンは、雑誌や新聞を読むだけでなく、家族が集まってオセロやボードゲームを楽しむなど、端末と人が「1対1」になる今までのPCとは違う可能性を感じた。弊社の投資先もすぐにiPadに向けたアプリを開発しているが、これは米ベンチャーの多くに見られる動きだ。今後、今までにないおもしろい使い方も見えてくると思う。

 ソーシャルアプリの国際化の動きも加速しているように感じる。以前、日本進出を狙っていると紹介した米国の大手ソーシャルネットのFacebookは、日本法人の社長も決まり本格進出をはじめる。また、ソーシャルアプリプロバイダー(SAP)のZyngaがソフトバンクとの提携による日本進出を計るとの記事もあり、米国での成長がスローダウンしたソーシャルアプリは「モバイル」「アジア」という2つのキーワードに新しい市場を求めてどんどん開拓をすすめている。

 逆に日本で成功したサイバーエージェントの「アメーバピグ」は、米国で「Ameba Pico」ピコの名前でサービスを開始。Facebookアプリとして順調にユーザーを伸ばしている。今まで日本発のアプリが海外で大きく成功しなかったというケースは多々あったが、Ameba Picoはソーシャルアプリの海外進出という点での試金石となっている。その成長に期待したい。

 最後に、付き合いのある地元大手ベンチャーキャピタルのDraper Fisher Jurvetson (DFJ)とCisco Systemsが主催で世界規模の学生起業家コンペを開催する。2009年に参加した中国の5Minutesは、このコンペを通じてDFJから350万ドルを集めるなど、実績のあるコンペで今回が2回目の開催となる。 審査に通った学生起業家はCisco Systemsのテレビ会議システムを使い、シリコンバレーのDFJのメンバーにプレゼンをする。学生のアイデアをシリコンバレーの大手ベンチャーキャピタルに紹介し、世界規模で会社を展開するいい機会である。関心のある方はこちらをご参照頂きたい。

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