もはや地上波とネットを区別する意味ない--radikoで見えたラジオ業界の地殻変動 - (page 2)

 そのマルチ聴取の効果もあって、アニメ声優とのタイアップグッズの販売も好調。100万人を記念して4月5日から2週間にわたり放送された特別番組「セイ! You ヤング」の評判も良く、同事業の収支は「2009年度3月期でとんとん」(文化放送取締役デジタル事業局長の田村光広氏)とのことで、収益面でも今期以降期待できる状況だという。

 ニッポン放送も地デジラジオ「Suono Dolce」専用のiPhoneアプリを3月に無料で出したところ、3日間で10万ダウンロードを記録したそうだ。これによって「朝晩の通勤時と昼休みの聴取が増大した」(ニッポン放送デジタル事業局長の檜原麻希氏)という。さらには番組を聴きながら、気に入った楽曲をiTunesから購入したというユーザーがこの1カ月で約1500件、成約率12%ということで、ネットラジオとiPhone、iTunes Storeの相性の良さが見えてきた。まさに「ネットラジオさまさま」の状況だ。

 檜原氏は「radikoやSuono Dolceアプリの開発により、ラジオは移動体メディアである事が改めて実証された。スマートフォンの出現によって、音声コンテンツはあらためて(ほかのことをしながら聴取するという)“ながらメディア”としての地位を確立できる」と期待を寄せる。J-WAVEの小向氏も「無線の広域ネット環境が凄いスピードで整備されつつある今、ネットなのか地上波なのか区別することの意味が今後なくなってくると思われる」と語る。

 radiko開始に至る背景を伝えた前回の記事でも触れたが、国を挙げてテレビの地デジ化を進めている一方で、ラジオの地デジ化は国からの方針がなく、各局それぞれが試行錯誤を進めているという状況だ。ラジオを地上波で聴取するのか、ネットで聴取するのか。はたまた地デジラジオのチューナーをどう普及させるのかといった問題も含めて、ラジオ業界の孤軍奮闘はまだまだ始まったばかりだ。

筆者略歴
土屋夏彦
ニッポン放送でディレクター、プロデューサーを務めた後、ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソネットエンタテインメント)に入社。ラジオに22年、ネットに8年の計30年間ソーシャルメディア作りに携わるメディアプロデューサー

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