東京都は3月17日、都議会で審議中の「東京都青少年の健全な育成に関する条例」(青少年健全育成条例)の改正案について見解(PDF)を発表した。
この改正案は携帯電話のフィルタリング、児童ポルノの規制を強化する内容で、民間団体や事業者から反対の声が多く挙がっていた。それに対し都は、携帯電話フィルタリングについて7項目、児童ポルノ規制について11項目の見解を示した。
青少年健全育成条例にはすでにフィルタリングに関する規定が存在するが、今回の改正案が可決、成立すると以下の項目が追加されることになる。
1、携帯電話の推奨制度の創設
都は、子どもの年齢に応じ、青少年の健全な育成に配慮した機能を備えている携帯電話等を推奨することができる。
2、フィルタリングの実効性の確保
事業者は、フィルタリングが、青少年がインターネットを利用して被害に遭うこと等を容易にする情報を閲覧する機会を最小限に止めるものとなるように努める。
3、フィルタリングを解除する場合の手続きの厳格化
- ア 保護者は、フィルタリングの解除に際し、青少年が有害情報を閲覧することがないよう適切に監督する等の正当な理由等を記載した書面を提出する。
- イ 事業者は、保護者に対する説明書の交付、正当な理由等の記録・保存を行う。
- ウ 都は、イの義務に違反した事業者に対し、勧告・公表及びこれに必要な調査等を実施することができる。
4、青少年のインターネット利用に係る保護者、都の責務
- ア 保護者は青少年のインターネット利用状況を適切に把握し的確に管理するよう務める。
- イ 保護者は、自らもインターネット利用に伴なう危険性等についての理解及びこれらの除去に必要な知識の習得に努め、青少年とともに利用に当たり遵守すべき事項を定めるなど適切な利用の確保に努める。
- ウ 都は、違法な行為等をした青少年の保護者に対し、再発防止に必要な措置をとるとともに、適切に監督するよう指導又は助言及びこれに必要な調査等を実施することができる。
5、青少年や保護者に対する効果的な啓発
- ア 都は、青少年がインターネットの利用の危険性及び過度の利用による弊害について適切に理解し、これらの除去に必要な知識を習得することができるようにするため、啓発について指針を定める。
- イ 事業者は、青少年がインターネット利用に伴なう危険性等について適切に理解できるようにするための啓発に努める。
この改正案にはさまざまな反対の声が集まった。まずは、2009年に国が定めた「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(青少年インターネット環境整備法)の基本理念に沿っていないという指摘だ。基本理念の内容は以下のとおり。
青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する施策の推進は、自由な表現活動の重要性及び多様な主体が世界に向け多様な表現活動を行うことができるインターネットの特性に配慮し、民間における自主的かつ主体的な取組が大きな役割を担い、国及び地方公共団体はこれを尊重することを旨として行われなければならない(青少年インターネット環境整備法の基本理念より)
今回の改正案は、「民間における自主的かつ主体的な取組が大きな役割を担い、国及び地方公共団体はこれを尊重することを旨として行われなければならない」の部分に反するとの批判が寄せられている。
これに対する都の見解は、「法の趣旨に反して、民間の自主的な取組を規制し、後退させるものではない」というものだ。
また、改正案の概要の5-アにある「都は、青少年がインターネットの利用の危険性及び過度の利用による弊害について適切に理解し、これらの除去に必要な知識を習得することができるようにするため、啓発について指針を定める」の部分については、民間の自主活動を規制するものだという声が挙がっている。
これについて都は、「指針について事業者が従うべきとの規定はなく、事業者の自主活動を規制するものではない」としている。
改正案の概要の3-ア「保護者は、フィルタリングの解除に際し、青少年が有害情報を閲覧することがないよう適切に監督する等の正当な理由等を記載した書面を提出する」の部分は、保護者の意思を制限するものだと指摘されている。同様の条例案は埼玉県でも審議されているところだ。
これについて都は見解の中で、「書面提出の有無にかかわらず解除は可能である」としている。都に詳細を問い合せたところ、「理由書の提出がなくても、保護者の同意があればフィルタリングを外すことが可能。理由書の提出は任意で、罰則はない。事業者に保存すべきと定めているのは、理由書ではなく、保護者の同意があったという記録。保護者がしっかり管理するというのであれば問題ない」との回答があった。
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