元来、サイト内解析ツールは、ユーザービリティ向上の観点から成約率(コンバージョンレート:CVR)を高めようと試みる際の分析“手段”として用いられているが、その分析“手法”はまだ確立されていない。安易な分析は真実とは程遠い結果をもたらし、時間と労力だけを費やしてしまう。
そんな懸念を一抹でも持っている方のために、サイト内解析における分析プロセスをCVR向上のための方程式として紹介する。汎用的に使える分析手法であるため、各論部分は論じることができないが、サイト内解析担当者に新しい分析の切り口を提供したい。
まずCVRの定義は「サイト来訪者数に対する成果に至った回数(または人数)の割合」とする(成果とはサイトの目的によって「会員登録」や「資料請求」、「購入回数」に相当する)。
CVR向上のための方程式はいくつか存在するが、それらにはヒエラルキー(階層)があり、そのヒエラルキーを意識し、上位(マクロ)から下位(ミクロ)へ落とし込んで分析をすることがサイト内解析を理解していく上では重要である。まずはその上位に位置する方程式を下に示す。
上記の方程式はウェブマーケティング全般に共通するものである。そして、この方程式に含まれる要素の中で、市場、競合以外はすべてがサイト内解析ツールで取得できうるデータである。
これらの要素に含有される指標を分析に用いるのがサイト内解析ツールであるが、その分析の際に重要なのは「いかに個々の要素の効率化を図るか」ではなく、「いかに個々の要素を掛け合わせて効率化を図るか」という視点を持つことである。
たとえば、広告の効果が上がらない理由は、広告のクリエイティブや媒体要素という「誘導」に関する部分だけではなく、コンテンツなどの「サイト内」に関する部分にあることはおわかりいただけると思う。ここでは、特に密接に相関するこの「誘導戦略」と「サイト内戦略」の掛け合わせを行う分析手法について事例を踏まえて紹介する。
サイト内戦略はユーザー嗜好に合わせて立案するものである。ユーザー嗜好は個々人で異なることを考えると、その究極は個々人に合わせたサイト施策であると言える。しかし、やみくもに個々人(ミクロ)にフォーカスするよりも、まずはマクロの視点から順を追って分析する方が全体を俯瞰して課題を抽出することができる。
そこでユーザーを下記のように分類することを提案したい。これはユーザーモチベーションを大きく5つの階層に分けたものである。
この中で、まず取り組むべきは第一階層「新規・リピーター別」の視点での「誘導戦略」×「サイト内戦略」の分析である。ユーザーモチベーションで簡潔化したCVR向上に対する方程式を示し、その重要性についてECサイトを例に挙げて説明する。
上記方程式は多くのサイトに当てはまるが、特にECサイトでは、新規ユーザーの誘導により見込み顧客を増やし、リピーターの増加によりCVRを高め、ヘビーユーザーの育成により、さらに売上の向上、安定化を図ることができるといえる。では、上記方程式を理解していただくために、あるECサイトにおける興味深い事例を紹介しよう。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果