中でも最も力を入れているのがライブ配信で、これまでにもさまざまなアーティストのライブや、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)との協力でスペースシャトル「ディスカバリー号」の打ち上げなどを中継してきた。最も利用者が多かったのが、2008年9月に開催されたX JAPANのYOSHIKIの公開記者発表で、約5万人が同時視聴したそうだ。
MOVIEFULL上で提供されているコンテンツは自社制作のものがおよそ2割とのことで、多くは既存の映像コンテンツをライセンスを受けて配信している。当初は携帯電話向け動画サービスに対する理解があまりされておらず、特に海外を相手とした場合に交渉が難しかったようだが、最近ではだいぶコンテンツホルダーの理解が進んできたと和智氏は話している。
利用者の属性は男性の方がやや多く、20代後半が中心。地域は都市部に偏るのではなく全国的に広がっているとのことだ。人気のある番組は、男性であればグラビアやアニメ、女性であれば音楽やバラエティ、ボーイズラブ系のドラマなど。こうした傾向について、和智氏は「パーソナル性が強く、夜に利用するケースが多いという携帯電話の特性が出ている」と話している。
ユーザー層やコンテンツの幅を広げることに対し、和智氏は「エンターテインメントの主なターゲットは10代から20代後半までが中心となるため、それ以上の年齢層にまで広げてしまうとコンテンツ自体が嘘臭く見えてしまう可能性がある」と話す。幅を広げるより、1つ1つのジャンルを深く掘り下げていくことで、ユーザー拡大を図る考えとのことだ。
これまで無料動画が牽引してきた携帯電話向け動画サービスだが、市場環境の影響を受けている。2008年頃からPCで人気を博している「YouTube」などの動画共有サービスが携帯電話に対応したことで、携帯電話でもそちらを楽しむユーザーが増加。加えて景気が大きく後退し、他のウェブメディア同様、広告出稿が減少している。PCの世界ではUSENが無料動画大手の「GyaO」をヤフーのYahoo!動画と統合させるなど大きな変化が起きているが、携帯電話の世界でもビジネスの見直しが進みつつある。その1つが、広告を主体としたモデルから、課金を主体としたモデルへの移行だ。
MOVIEFULLも「投資段階にある」(和智氏)という状況の中、景気低迷などの波を受けて広告収入が落ちており、無料のサービスだけでは厳しくなってきているという。そこで2009年6月から、iモード向けに有料動画配信の「MOVIEFULL Plus」(※携帯電話からのみ視聴可能)を開始。12月24日にはau向けにも提供を始め、2010年1月にはソフトバンクモバイルにも対応する予定で、有料動画配信ビジネスにも力を入れていく方針だ。
MOVIEFULL Plusでは無料版との差別化として、全画面での再生に対応し、高画質化、高音質化を図った新しい再生アプリを用意。さらに当初から100を超える作品を揃えた。
モバイルでの有料動画配信サービスとしては後発となることから、他社サービスとの差別化としてライブ配信に力を入れ、2009年10月には山崎まさよしやスキマスイッチなどが所属するオフィスオーガスタのライブを生中継した。視聴料は1500円とモバイルコンテンツとしては高額な部類に入るが、生中継だけでなく録画映像や特典映像も視聴できるようにして魅力を高めた。和智氏は「地方ユーザーなどからすれば、ライブに行く距離やコストなどを考えると高くはない。画面の大きさでは本物に及ばないが、(ほかのユーザーと)時間を共有する楽しさは大きい」と、料金に相応のメリットがあるとしている。
無料のMOVIEFULLが既に多くの会員を集めていることからこれを集客に活用し、1話目を無料で配信して、以降のストーリーをMOVIEFULL Plusで見るようにユーザーを誘導する考えもある。
広告モデルから課金モデルへと業界が変化しつつある中、有料の動画サービスで大きな注目を集めているのが、エイベックス・エンタテインメントとNTTドコモの合弁会社であるエイベックス通信放送が2009年5月1日から提供している「BeeTV」である。
BeeTVが従来の動画配信サービスと大きく異なる点は3つある。1つ目は、既存の動画コンテンツを提供するのではなく、テレビに登場する芸能人を起用した、携帯電話専用のオリジナルコンテンツを用意しているということ。2つ目は、それら全てのコンテンツを、多くの動画サービスが採用する従量課金制で提供するのではなく、月額315円の定額で見放題としていること。そして3つ目が、モバイルコンテンツとしては類を見ない大規模なプロモーションを展開していることだ。
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