江崎玲於奈氏など、ノーベル賞や「数学のノーベル賞」と言われるフィールズ賞の受賞者5名が、現在政府の行政刷新会議が行っている予算見直しのための「事業仕分け」に対して共同声明を発表する。学術や科学技術に対する予算見直し作業が日本の科学技術発展にマイナスの影響を与えるという懸念にもとづくものだ。
声明を発表するのは、1973年にノーベル物理学賞を受賞した江崎氏のほか、1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進氏、1990年にフィールズ賞を受賞した森重文氏、2001年にノーベル化学賞を受賞した野依良治氏、2008年にノーベル物理学賞を受賞した小林誠氏の5名。
声明文案は以下の通りとなっている。なお、5名は11月25日、東京大学本郷キャンパスにてこの件に関する緊急討論会を開催している。
声明
資源のない我が国が未来を持つためには、「科学技術創造立国」と「知的存在感ある国」こそが目指すべき目標でなければならない。この目標を実現するために、苦しい財政事情の中でも、学術と科学技術に対して、科学研究費補助金を始め、それなりの配慮がなされてきた。このことを私たちは、研究者に対する国民の信頼と負託として受け止め、それに応えるべく日夜研究に打ち込んでいる。
学術と科学技術は、知的創造活動であり、その創造の源泉は人にある。優秀な人材を絶え間なく研究の世界に吸引し、育てながら、着実に「知」を蓄積し続けることが、「科学技術創造立国」にとって不可欠なのである。この積み上げの継続が一旦中断されると、人材が枯渇し、次なる発展を担うべき者がいないという《取り返しのつかない》事態に陥る。
現在進行中の科学技術および学術に関する予算要求点検作業は、当該諸事業の評価において大いに問題があるばかりではなく、若者を我が国の学術・科学技術の世界から遠ざけ、あるいは海外流出を惹き起こすという深刻な結果をもたらすものであり、「科学技術創造立国」とは逆の方向を向いたものである。
学術と科学技術に対する予算の編成にあたっては、このような「事業仕分け」の結論をそのまま反映させるのではなく、学術と科学技術の専門家の意見を取り入れ、大学や研究機関運営の基盤的経費や研究開発費等に関する配慮を行い、将来に禍根を残すことのないよう、強く望むものである。
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