慶応義塾大学SFC研究所プラットフォームデザイン・ラボ主催のシンポジウム「情報通信制度改革三部作シリーズ」第1回が10月29日、慶応義塾大学日吉キャンパスで開催された。今回のテーマは「電波オークションは導入すべきか」。欧米諸国で実際に行われている電波オークション制度の日本での導入について議論が展開された。
日本における周波数の割り当ては国(総務省)が認可方式で行っているが、近年では占有周波数や国の放送事業歳出費と比較して放送事業者の利用料支払い額が少ないことなどを疑問視する声があがっていた。そうした状況の中、民主党が2009年夏の衆院選前に発表した政策集「INDEX2009」において電波オークション実施の可能性に言及したことから、注目が集まっている。
シンポジウムはそうした状況を受けて開催されたもので、登壇者からも「不当に安く、また国が勝手に割り当てるという制度は問題」(上武大学大学院経営管理研究科教授の池田信夫氏)など、割り当ての透明性確保や利用効率向上などの観点から導入を歓迎する意見が多くみられた。
一方、「(オークションで競り落とす)資金力のある事業者だけにチャンスが生まれる構造になりかねない」(ジャーナリストの佐々木俊尚氏)といったデメリットも指摘され、「まずはテストケースとして実施するのがよいのでは」(慶応義塾大学大学インメディアデザイン研究科教授の中村伊知哉氏)と、導入にあたっては慎重を期するべきとの声もあった。また、自民党政権下において実際の政策策定に携わったこともある同大の岸博幸氏は「理論的には賛成だが、(競争条件などの面で)実現は難しい」とした。
今回、最も強く電波オークションの必要性を説いたのは池田信夫氏。「40MHz程度の帯域を細切れに売っても意義は少ない。ホワイトスペース(利用免許が与えられている未使用帯域のことで、中継無線(FPU)などを指す)と一体で考え、100MHz程度を対象とすべき」とした。また、落札額が高騰して入札事業者が限られるとの懸念に対しては「(米国でのベンチャー枠のようなものを)恣意的に設計するのではなく、規制を強めることで価格を抑えるべき」とし、「物理層のみをオークションで割り当て、落札者は上部レイヤー(プラットフォーム、コンテンツ事業者など)の参入を拒否できないようにする」といったアイデアも提案した。
また、電波オークション導入について原口一博総務大臣から放送局を擁護する発言が出たことについて「放送用に割り当てられた放送局の帯域をオークションにかけるということ自体ありえない。放送局と、その意を受けた政治家の思いすごし」と断じた。
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