デジタルマーケティングの世界的イベント「ad:tech tokyo」初日の9月2日、米Microsoftバイスプレジデントでアドバタイザー&パブリッシャー・ソリューショングループ担当のスコット・ハウ氏が、「変化する経済環境におけるデジタル広告の未来」と題した基調講演を行った。
ハウ氏によると、ここ1年の広告業界は非常に厳しい環境下に置かれていたという。「担当者は経営者やクライアントから少ない広告予算やリソースでより実績の高い効果を日々求められ、景気が後退するなかで広告を展開するのは極めて難しい」と語る。
ハウ氏はまた、経済環境のみならず、広告自体に起きている環境変化も指摘した。その1つ目が、消費者が接する広告の絶対量だ。
「ある統計によると、1970年に消費者が広告に接していた量は1週間に300程度だった。それが今は1日あたり3000以上に拡大している。しかも、消費者は見るべき広告を取捨選択してできるだけ見ないようにする。こうしたなかで、消費者に広告のメッセージを訴求するのは決して容易なことではない」(ハウ氏)
一方でハウ氏は、未来の広告で確実に起こりうる変革を4つのポイントにまとめた。「まず第1が、将来、ほとんどすべてのコンテンツはデジタルになるということ。そして第2に、配信されるスクリーンやデバイスが多様化する。第3に、ターゲットが絞られたより少ない広告で、ユーザーがより豊かな経験を得られるようになる。最後に、ソフトウェアによってこれまで時間や空間などで制約されてきた広告のクリエイティブが解放されるようになる」(ハウ氏)。
こうした環境変化のなか、Microsoftでは、ユーザーが何をしたいのかを先読みしてリレーションシップを構築していく分析技術を模索しているという。ハウ氏は、「Xbox 360」のインターフェースとして採用される予定の“ナチュラルユーザーインターフェース”を紹介。これは身体動作や音声をセンサーで検出し、プレイヤーが画面の前に立つだけでコントローラーなしで操作できるという新たなインターフェース技術。「広告の世界も1〜2年後にはこうしたインタラクティブで三次元の世界に向かうべきだ」とハウ氏は話す。
また、ハウ氏は今後のマーケティング担当者のあり方も変化していくと予測する。「従来の広告業界では、プレイヤーはメディアとクリエイティブの二者だった。しかしこれからは、そこにアナリストが加わることになるだろう。かつてはコンサル会社や投資銀行に在籍してした優秀なアナリストをもっと広告業界に誘致することにより、勝利を収めることができるマーケティングを展開できるはずだ」と述べた。
さらに、調度品からバリスタまですべてを重要視するスターバックスの戦略を例に挙げ、「オンラインの世界でも、1つの決定的なアイディアよりも、すべてが統合されたキャンペーンを目指さなければならない。散弾銃のようなアプローチを取るべきだ」と主張した。
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