モバイル動画市場は本当に成熟したのか?--「ドコモ動画」から「BeeTV」へ - (page 2)

倉田浩明(ドコモ・ドットコム コンサルティング部コンサルタント)2009年07月03日 12時07分

【2008年中期】、有料・無料の住み分けと、モバイル動画を視聴する環境が整い始めた夜明け前

 それからほどなくして、モバイル動画市場には大きな2つのトピックスが登場した。

(1)著作権を侵害している動画コンテンツの削除

 2008年3月、ニコニコ動画は著作権を侵害している動画コンテンツを全て削除する意向を放送局へ申し入れた。2007年も著作権に関する議論は日々行われており、その明確なアクションがこの時期に加速した。前後するが、音楽に関しても2007年7月に動画共有サービスにおける利用許諾条件が定まり著作権が絡む殆どの動画コンテンツが無料では見られなくなることが決定した。

 そうしたコンテンツがなくなった場合、ユーザーは引き続き動画視聴を行うのであろうか。2008年5月時のアイシェア調べではPCの動画共有サイト利用者の約半数が、「著作権抵触動画が削除されたら、その動画サイトの利用を止める」と回答している。さらに、PCの動画共有サイトがiメニュー動画サイトになったが利用したいか?との質問に対しては約73%が「いいえ」と答えている。理由としては、「パケット代が気になる」「表示が遅い」という、有料化及びPCの環境を主体としたモバイルデバイス環境におけるストレスを理由に挙げている。

(2)「ドコモ動画」キャンペーンの開始

 ほぼ時を同じくして、2008年5月から906iシリーズ発売に伴うドコモ動画キャンペーンが実施された。当キャンペーンの内容は、iメニュー動画サイトで配信している有料動画を一部無料で視聴可能というもので、「モバイルで動画」という認知を一気に広げることとなった。

 また、販売促進がなされた906iシリーズは高速通信HSDPAに対応しているため、以前モバイル動画サイトを見ない理由に「表示速度が遅い」という点を挙げていたユーザーにとっては1つ課題が解消されたこととなる。また、機種変更のために店頭を訪れた際パケット定額制に加入するケースも多く、もう一つの課題点であった「パケット代」も解消されたケースも多いようだ。こうしたユーザーの環境改善を、コンテンツプロバイダー各社はビジネスの素地が整ってきたと判断し、文頭に述べたように2008年後半にこぞって参画をしたように思われる。

【2008年後期】、一歩一歩ゆっくりと成長を見せ始めたiメニュー動画市場

 ドコモ動画キャンペーンの効果もあり、ユーザー、サイト、端末性能と、環境はほぼ整ってきた。今までは携帯リテラシーの高いユーザーに限られていた動画というコンテンツが携帯の買換えタイミングに乗じ、比較的リテラシーの低いユーザーもターゲットとなったことは大きい。また、各iメニュー動画サイトも競ってサイトに付加価値をつけ始めた。

 その一つが価格戦略である。

 ドラマは基本的に十数話からなり、アニメに関しては数百話からなるコンテンツもある。1話の視聴単価は100円〜500円が相場となっており、1話300円と考えると11話からなる1つのドラマを全て見るのであれば3300円とモバイルでのコンテンツとしては非常に高い買い物となり、購入する際の障壁となってしまう。その購入障壁を減らすための施策として導入されたのが複数話一括購入のパック購入だ。パック購入すれば5〜30%のポイントバックとなり、バック分のポイントは翌月に付与される。継続施策としてコミック市場などでも行われている施策だ。施策自体に大きなインパクトはないが、サイト同士がユーザー獲得に違いを見せるため、サービスが洗練されてきたと言える。

 さらには、iモードサイトの情報料が一定期間無料で利用できる「お試しマイメニュー」を取り入れたり、動画だけではなく着うたフル(R)や電子書籍(主にコミック)など、動画コンテンツと親和性の高いデジタルコンテンツの提供を行うサイトなども現れ始めた。

 今まではどのサイトも同じような動画コンテンツが並び、同じ金額を払って観るのが主流で、ユーザーは選択して価格的に得をするようなメリットがほとんどどなかった時期から、入会するサイトを「選択する」ことで得できる可能が生まれ、大きな転換期を迎えた。

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