ブログ分析で自社情報の波及効果を知る

米山徹幸(大和総研)2009年06月17日 12時37分
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 この1月、シカゴ大学ビジネススクールのユージーン・ソルテス氏が発表した論文が世界各地のIR関係者の間で大きな話題になった。「企業ニュースの広がり方が資本市場でのパフォーマンスに大きく影響する」と指摘したからだ。

 2001年1月から2006年12月まで6年間にわたる個別企業に関連する約930万もの新聞記事を市場のパフォーマンスの関連から分析したこの論文は、ニュースが伝われば伝わるほど、株式の売買スプレッドは縮小し、売買高は増加、株価の変動率は小さくなると主張する。

 企業情報が新聞で取り扱われれば、それだけ市場パフォーマンスは良好に推移するというのだ。もっとも、調査はプリント媒体の新聞記事を対象にし、テレビやラジオ、インターネットのブログなどは取り扱っていない。

 プリント媒体だけでもこれだけの影響があるなら、論文が対象としなかったテレビやラジオ、インターネットでの企業情報の波及プロセスやその効果の実態はどうかとIR関係者ならずとも注目するのも当然だ。

 とりわけ、企業サイトやブログはすでに米証券取引委員会(SEC)が認める企業の情報発信メディアでもある。そして、ウェブ空間で影響力を発揮する有力なブロガー(アルファブロガー)の動きも気になる。というのも、ブログがもたらす情報メディアに対する影響力に、ときに危うい話が聞こえてくるからだ。

 最近も有力紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(6月8日付)にこんな話が紹介されていた。

 「A社はB社を買収することがあるのか」と問うアルファブロガーのコメントがサイトに登場すると、数時間後には「消息筋の語るところによれば」と断った一文を加え、その内容は有力業界メディアのサイトに記事として掲載され、その結果、事実の確認もなく、買収話がウェブ空間を駆けめぐるというのだ。

 ブログを起点とする企業情報の広がりと波及プロセスを示す一例だ。IR担当者にブログ・ウォッチという仕事が加わったのも無理はない。

 日本でも、ブログのメッセージを評価分析する動きがある。IR担当者にブログ・ウォッチという仕事が加わったのも無理はない。個人投資家や機関投資家、アナリストの発言はもちろん、掲示板やソーシャルネットワークサービス(SNS)も対象になる。こうしたブログ分析が浸透すれば、IR現場はさらに効率的な情報発信に取り組まざるを得なくなるだろう。

◇ライタプロフィール
 米山徹幸(よねやまてつゆき)
大和総研・経営戦略研究所客員研究員。近書に「大買収時代の企業情報〜ホームページに『宝』がある」(朝日新聞社)ほか。最近の論文に「設立40周年を迎えるNIRI(全米IR協会)の年次大会」(「広報会議」09年7月号)、「国内企業の経営統合、米国株主比率に注意〜SECに「様式F-4」の提出も」(「月刊エネルギー」09年6月号)など。

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