ワシントン発--X線を使って旅行者の衣服の中を検査するという米運輸保安局(TSA)の計画は、近い将来、中止になるかもしれない。
米下院は米国時間6月4日、「実質的に裸にされての身体検査」と批判されている、空港検問所における検査手法の拡大を抑制する法案を、310対118で可決した。
プライバシー擁護団体によると、低エネルギーの後方散乱X線を使えば、「旅行者の裸の非常にリアルな画像を作り出すことが可能」で、その画像は「性器がはっきりと分かるくらい精細」なものだという。一方で、TSAは、検査官には身体の部位の輪郭をぼやかした画像しか見えないようにする「プライバシアルゴリズム」などを追加し、スキャニング技術に改良を施した、と述べている(関連するCBS Newsの動画を参照)。
下院での投票では、ユタ州選出の共和党下院議員であるJason Chaffetz氏が起草した、より広範なTSA法案への修正案も対象に含まれていた。
Chaffetz氏の修正案には、乗客検査の主要な手段として全身画像撮影を「使用してはいけない」こと、そして、乗客にはそれを拒否する権利があり、代替検査として、「衣服の上から手で調べる身体検査」を受けられること、が明記されている。さらに、同修正案は、乗客検査の目的で必要がなくなった後、全身画像を保管したり、送信したりすることも禁じている。
「全身画像撮影というのは、正にその名の通りの検査方法だ。この方法を使えば、TSA職員は裸での身体検査と同等の検査を実施することができる」とChaffetz氏は投票の後、声明で述べた。「飛行機の安全を確保するのに、私の妻や子供の裸を見る必要などないはずだ」(Chaffetz氏)
Chaffetz氏は、まず4月に、同法案を単独の法案として提出した。最初の法案では、TSA検査官が乗客の画像を共有したり、コピーしたりすることを、連邦犯罪と定めていた。修正案として付された最終版では、その罰則規定がなくなっていた。
後方散乱X線は、比較的低出力で頻繁に飛行機に乗る人にとっても安全と考えられている。後方散乱X線メーカーのRapiscan Systemsは、同社の装置を使えば、「爆発物や麻薬、セラミック製の武器」を検出することが可能で、従来の金属探知機では見つけられないセラミック製ナイフなども検出できるとしている(ミリメートル波と呼ばれる競合技術が存在する)。
アメリカ自由人権協会(ACLU)や電子プライバシー情報センター(EPIC)、米国銃所有者協会(GOA)、米国消費者連合(CFA)などの権利擁護団体で組織した連合団体は5月31日、米国土安全保障省(DHS)長官のJanet Napolitano氏に書簡を送付し、「プライバシーおよびセキュリティ面でのリスク評価が完全に終わるまで、そのプログラムを停止」するよう求めた。
TSAによると、同局は現在、ロサンゼルスやサンフランシスコ、アトランタ、ワシントンレーガン国際を含む米国内の19の空港で、ミリメートル波技術を使用しているという。
TSAのプライバシーポリシーおよびコンプライアンス担当ディレクターであるPeter Pietra氏は6月2日、ワシントンD.C.で開催されたComputers, Freedom and Privacyカンファレンスにおいて、全身スキャニング技術を擁護した。
「私にとっては、磁気探知機による検査を受けることに比べたら遙かに良い」とPietra氏は述べた。
下院本会議は4日、397対25で「Transportation Security Administration Authorization Act」を可決した。これにより、同法案は上院に送付されることになる。上院は、プライバシーに関する修正案をそのまま維持することもできるし、排除することも可能だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 原文へ
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