京セラの株価が順調な上昇をみせている。前期の2009年3月期の連結営業利益は大幅減益となったものの、今期の2010年3月期は小幅ながら営業利益の増益を見込んでいる。これは、電機セクターの主要企業の多くが連続営業減益、あるいは赤字継続などを予想している中で出色の存在といえる。同社の業績動向と株価推移について探った。
同社が発表した2009年3月期の連結業績予想(米国会計基準)について、売上高1兆400億円(前期比7.8%減)、営業利益440億円(同1.3%増)、純利益570億円(同1.8%増)と見込んでいる。
同社では今期の業績見通しについて、前期の第4四半期(2009年1〜3月)に比べて、アジア市場向けの携帯端末や小型パソコン向け電子部品の一部に需要回復傾向にあるとしている。これは、中国で農村部での景気刺激策としてテレビや携帯電話、パソコンなどの家電製品の購入に対して政府が補助金を出す「家電下郷」に伴う需要増などが寄与している。
例えば、今期の部門別の営業利益予想では、前期に2億4000万円の営業赤字となったファインセラミック部品関連事業について今期は収支均衡への回復を見込み、同様に40億700万円の営業赤字だった電子デバイス関連事業の今期は、一転して20億円の営業黒字転換を見込んでいる。
さらに注目したいのは、今期の想定為替レートで、電機、自動車、精密機器などの多くの主力輸出関連企業が1ドル=95円、1ユーロ=125円としている中で、京セラは1ドル=92円、1ユーロ=123円とより円高の水準としている。これは、実際の為替レートが想定に比べて円高で推移すれば大幅な収益上方修正となる可能性もある。ちなみに同社の場合、対ドルで1円の円安で7億6000万円、同様に対ユーロでは1円の円安で9億円の増益要因となる。
今後の同社の収益拡大を占ううえで注目したいのが、太陽電池関連の動向だ。同社は太陽電池については国内ではシャープと並ぶ高い実績を残してきた。最近この分野での動きが活発化している。同社は、イオンとの両社の協業で、太陽光発電システムの販売を拡大すると発表した。イオンのショッピングセンターに京セラの販売店をテナントとして入れる。今後3年で1万戸のシステム販売を目指す。イオンカード会員への案などを通じ、住宅用太陽光発電システムによる環境に配慮した新たな生活を提案する。
京セラは、1975年から太陽光発電の事業を開始し、1993年には業界として初めて住宅用太陽光発電システムの販売をスタートした。現在国内では、太陽光発電導入の飛躍的な拡大を目的に、国や地方自治体から一般住宅への太陽光発電システム設置に対しての補助支援が開始されている。
また、同社は、トヨタ自動車が5月18日に発売したハイブリッドカー「新型プリウス」のオプションシステムである「ソーラーベンチレーションシステム」に、太陽電池モジュールを供給すると発表した。このシステムは、日中の駐車時に、車体ルーフの太陽電池が発電する電力によってファンを駆動させて車内の換気を行い、気温の高い季節でも車内温度の上昇を抑えるというもの。車載部品として充分に耐えうる太陽電池の品質を確保するために、耐熱、耐振動、耐衝撃などの項目で厳しい条件を設定した評価試験を実施し、今回の新型プリウスに求められる基準を満たした。
同社の株価は3月6日の年初来安値5310円を付けて以降、ほぼ一貫して下値を切り上げるかたちで上昇を続けている。5月7日に8170円の年初来高値を更新して、現在は小幅な調整を経て再び上昇軌道に乗りつつある。これは、ほぼ2カ月間に54%の上昇をみせたことへの反動もあったようだ。しかし、先週末29日の終値7460円で試算した連結PBR(株価純資産倍率)は1.07倍と割高感はない。中期的には株価1万円を目指した展開が期待できそうだ。
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