ファッション誌に見られる「逆」潮流(続)

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 前回は「コンテンツ産業論」講師として東京大学にお招きしたPopSister編集長兼Popteen副編集長の石原亘さんのお話をもとに、ファッション業界における従来のトップダウン的トレンド(流行)に触れた上で、500人アンケートというユーザー発のボトムアップ現象に触れたところでした。引き続き、この現象について語っていきます。

読者モデル

 もうひとつ、ユーザー嗜好の取り入れた例として、なるほどと思ったのは、今や一般的になった読者モデルの存在です。

 元Popteen誌の看板モデルで「100億円の経済効果を持つ」と言われる益若つばささんです。彼女は17歳の時に読者モデルとして同誌に初登場したのがきっかけとして、頻繁にメディアに登場するようになりました。読者モデルを採用するという手法は、雑誌が街角で見つけた着こなしのいい一般女性を雑誌に掲載するということです。

 これは、ファッション誌がトレンドを創造しているのではなく、ユーザーの嗜好を雑誌が取り入れているという端的な例といえるでしょう。彼女の身長はモデルとしては相当低い約150cmなのですが、背が低いからこそ参考になるという読者の声も多いようです。

 この例では、ファッション誌が「ユーザー(読者モデル)⇒雑誌⇒ユーザー(一般読者)」という形でユーザーとユーザーの情報伝播を仲介する媒体になっているという見方も可能です。

 ちなみに、エビちゃんと人気を二分した押切もえさんも、元々はPopteenの読者モデル出身です。

雑誌とアパレル企業のコラボ

 さらには、「ユーザー⇒雑誌」という流れに続き、「雑誌⇒アパレル企業」というボトムアップ現象も、結構、増えてきたようです(注:ここでは専門店など小売を含んだ広い意味で「アパレル企業」という言葉を使っています)。

 一般的に、雑誌とアパレル企業は広告掲載や取材を通じて関係が親密化するケースが多いそうですが、その過程で、双方の間でかなり密な情報交換が行われます。このような緊密な関係を示す例として、ファッション誌とアパレル企業の共同で商品企画するコラボ企画が挙げられます。

 Popteenでの最近の例としては、SHIBUYA109のトップブランドであるセシルマクビーと共同での「制服」の商品企画があります。ちなみに、ここでいう「制服」とは学校が認めた公式の制服ではなく、女子高生の間で流行している「制服のような(非公式な)私服」のことです。ともあれ、この制服は発売から1週間で完売し在庫がなくなるという人気だったそうです。

 人気ブランドの服を、人気雑誌が掲載するのですから、売行きが加速するのは一見自明に思えます。しかし、そうであれば、「別に共同商品企画など行わず、アパレル企業が単独で企画し、ファッション誌に広告掲載すればいいのでは?」という疑問が湧いてきます。

 私は、アパレル企業が雑誌との共同商品企画を行う理由の大きなものとして、雑誌がユーザーニーズをアパレル企業より把握しているから、という状況があるのではないかと想像します。なお、この仮説は、今後、アパレル企業の方を講師にお呼びした際に確かめようと思っています。

 ともあれ、500人アンケート、読者モデル、ブランド/雑誌コラボといった例を説明することで、「ユーザー⇒雑誌⇒アパレル企業」というボトムアップ型の情報伝播が起きている現実を感じていただけたのではないでしょうか。

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