社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC)の理事長を務める加藤衛氏は、4月28日に申し立てた公正取引委員会への排除措置命令取り消しを求める審判請求について「どちらかの勝ち負けということではなく、いかにソフトランディングを求めるかということが重要」とし、JASRACと公取委が対決していると認識されていることに対して懸念を示した。
これは5月20日に開催されたJASRACの定例記者会見の場で述べたものだ。
加藤氏は、公取委の排除措置命令について、海外の音楽著作権管理団体などから心配の声が届いているとした上で「どうなっているのか、と聞かれても答えようがない状況。審判請求とは別に公取委と数回、協議の場を持ったが、それでも具体的な指示はない」と困惑した様子を見せる。「もちろん(公取委側で)検討してもらっている最中だとは思うが、いずれにしてもユーザーおよび権利者にとって望ましい結論を得る必要がある」とした。
対決姿勢を取っているとの見方もされているが、「意気込むとか、勝ちに行くとかいう姿勢ではない」と反論。ただし、「仮に(使用した楽曲を包括契約ではなく)曲目別に徴収する形に移行せざるを得ないということになれば、ユーザーの負荷が増加し、JASRACにも少なからずダメージはある」として、議論の行方がJASRACの事業に影響を与えるとの見方を示した。
2008年度の使用料徴収額は「放送等」「ビデオグラム」「インタラクティブ配信」「出版等」などの分野が前年度を上回った。特にビデオグラムでは、同日発表された2009年「JASRAC賞」で銀賞を獲得した「創聖のアクエリオン」をはじめとして、パチンコ、パチスロ関連が堅調に伸びた。インタラクティブ配信では、2002年のピーク時には95.6%を占めた「着メロ」が12.8%にまで減少し、代わって「着うたフル」を含む楽曲配信が55.7%を占めている。
前年度比4.5%増となった放送等の分野については、包括契約徴収の基準となる金額が2年前のものになるため、2008年来の世界的不況の影響は2009年度以降に現れることになる。加藤氏は、包括契約の対象外となるCMでの楽曲利用がすでに減少傾向にあることを紹介し、「一刻も早く景気回復の方向に向かい、国民の皆様へ音楽を届ける機会が増えることを望む」と話していた。
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