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軍事映像の活用に乗り出した米国防総省、課題はメタデータの標準化

志村一隆(情報通信総合研究所)2009年05月08日 10時00分
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 4月18日から23日まで米国ラスベガスで開催された映像関連の展示会「NAB Show」では、放送業界の映像技術を軍事利用することなどについて議論するMilitary & Government Summitが開催された。その中のセッション「Motion Imagery Standards」(モーション画像の標準化)では、映像の保管や利用のためには、メタデータを含む映像ファイルの規格統一が必要であるという議論がなされた。

遅れている軍の映像情報利用

 米国防総省の1機関であるNational Geospatial-Intelligence Agency(NGA:米国家地球空間情報局)のDonnie Self氏は、「数年前、私は軍が撮影したビデオを預かったことがある。そのビデオは、利用も廃棄もできず、ただ自分が保管しなければならないと言われ、家に数十箱のビデオが放置されていた。ビデオをオンラインに保存し、後日利用するという考えがなかったのだ」と語り、軍の映像関連の利用方法が遅れていると指摘する。

 軍事映像には資料的な価値があることから、メタデータを付加したうえでアーカイブ化する必要性が生まれているという。現在、映像を多く撮影しているのは陸軍と空軍であり、NGAはこうした映像資料を基に情報を集約している。映像資料は、監視、法廷資料、偵察、攻撃目標の絞り込みなどに使われる計画だ。Self氏は、放送業界のノウハウを生かして情報の集積、分析を進めたいと述べる。

軍事映像の内訳 撮影映像の内訳。空軍(AIR FORCE)や陸軍(ARMY)が多い

軍事映像を民生PCで利用できるように

 米国防長官のタスクフォースアドバイザーであるStephen Long氏によれば、映像のメタデータ付与に関する課題は、1995年に初めて認識されたという。当時のメタデータは人力で付加されていたため、これを自動化するのが最重要な課題として挙げられた。そこで、Motion Imagery Program Plan for Metadata Systemというメタデータに関する計画が策定された。

 このほか、NGAのMotion Imagery Standard Board(MiSB:モーション画像標準化評議会)のリーダーを務めるHarrisのRick Collier氏は、国防省がNATOなどと協議を進めているFMV(Full Motion Video:テレビと同等のフレームレートである毎秒30フレームの動画)の標準化について話した。ファイル形式、変換方式、圧縮、解像度の4種類について標準を定めるもので、軍で撮影した様々なファイル形式の映像をMPEG-2やH.264形式にまとめ、民生PCなどでも利用できるようにする狙いがある。

 デジタル映像配信のソリューションを手掛けるLG電子傘下のTraiveni DigitalのCTO、Richard Chernock氏は、衛星や地上基地から送られてくる大量の情報をリアルタイムに集積し、作戦策定などで利用するためには、メタデータの標準化だけでなく、情報伝送の安定化も重要な課題だと語る。大量の情報が一度にネットワークに流れ込むと回線がオーバーフローし、メタデータなどの情報処理がうまくいかず現場が混乱する恐れがあるからだ。こうした情報処理のエラーはランダムに発生するといい、こうしたエラーを防ぐには、情報量に合わせて配信システムを安定させる仕組みが欠かせないと話した。


筆者略歴
志村一隆
1991年早稲田大学卒業、WOWOW入社。2001年ケータイWOWOW設立、代表取締役就任。2007年より情報通信総合研究所で、海外メディア、インターネット市場動向の研究に従事。2000年エモリー大学でMBA、2005年高知工科大学で博士号取得。水墨画家としても活躍中。

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