ライブドアは4月20日、新規事業発表会を開催し、新たなブログサービス事業「Blogger Alliance」を披露した。この事業は、livedoor BlogのシステムをASPサービスとして提供する「livedoor Blog ASP」と、メディア間の提携事業「BR Media Partner」で構成される。
発表会に登壇したライブドア ブログビジネスユニット長の佐々木大輔氏は、ブログ市場の現状について、「ブログサービスを停止する事業者が増え、ブログへの新規参入が減っている」と述べた。サーバ、回線、運用のコストと、広告売上が見合わないためだという。
一方でライブドアは、自社インフラによる競争力のあるコスト体制と、ブログクチコミ広告「livedoor BR」と有料プランによる売上で、ブログ事業を黒字化した実績を持つ。こうしたノウハウをもとにブログ事業者を支援することが、ASPサービスとメディア間の提携によるBlogger Allianceだ。
企業はlivedoor Blog ASPを導入すると、livedoor Blogのシステムを自社の顧客に独自ブランドで提供できるようになる。利用料金は1ブログあたり50円。
初の導入企業はイラストコミュニティ「pixiv」を提供するピクシブ。同社はイラストに特化したブログサービス「pixivブログ」を4月23日に開始する。pixivユーザーが使っているpixiv IDがブログでもそのまま利用できる。
ピクシブ代表取締役の片桐孝憲氏は、ブログ事業者の中からライブドアを選んだ理由について、「会社の日記にもともとオープンソースのブログエンジンを使っていたが、管理画面が使いにくかったり、レスポンスが遅かったりと不安があった。ブログサービスを全部使ってみたところ、livedoor Blogが一番、管理画面が使いやすく、しかも軽かった。たぶん世界でもっともブログテクノロジーを持っている会社だと思う」と話した。
加えて、「ブログという成熟したソフトウェアを自分たちで作るのは、いまからWordとかExcelを作るくらい難しいことだと思っている。それをゼロから作るのはコスト的にもリソース的にも難しいと判断した」(片桐氏)という側面もあったという。
livedoor Blog ASPでは、モバイル版も含めてlivedoor Blogと同じ機能が提供される。ドメインもデザインもカスタマイズ可能だ。pixivのように、初期投資なく既存の会員向けにブランドを保ったままブログサービスを提供できるのが利点だ。
Blogger Allianceを構成するもう1つの事業がメディア間の提携である「BR Media Partner」だ。こちらは小学館の情報誌「DIME」が第一号案件となる。ライブドアとDIMEは、誌面とブログを連動させ、セットで広告を販売する。具体的には、DIME誌面でPCの新しい使い方をブロガーから募集し、livedoor Blogのキャンペーンサイトでブロガーの意見を集約する、といった事例が最新号で見られる。
livedoor Blog ASPで運営されるブログサービスはライブドアのクチコミ広告ネットワークであるlivedoor BRに加わり、売上の一部を得ることができる。そのため、たとえば上記のような他社メディアとのキャンペーンに、pixivブログのブロガーが参加することもあるという。
DIME副編集長の宮澤明洋氏は、「雑誌とブログがあわさることによって、より広いクチコミ効果が得られ、いままでなかったような展開が期待できる」と期待を寄せた。
既存会員を抱えるインターネットサービス事業者にブログシステムを提供することでブログネットワークの裾野を広げ、メディアにクチコミ広告のノウハウとともにブログネットワークを提供する。こうした一連のビジネスモデルがBlogger Alliance事業だ。「ライブドアだからできることだ」と佐々木氏は言う。
「Open&Shareという社是がある。livedoor Blogのシステムを社内に閉じ込めておくのではなくて、ASPとしてオープンに提供していく。そこであがる利益は我々だけで得るのではなく、シェアすることで市場を拡大していきたい」(佐々木氏)
2011年中の事業目標として、100社のブログASPパートナー、800万ブロガーのネットワーク、20億円規模の売上拡大を目指すという。
発表会にはライブドア代表取締役社長の出澤剛氏も登壇した。「分社化から2年間かけて基礎体力作り、ウォーミングアップをしてきた。今期は反転攻勢、守りから攻めへという1年にしていきたい」と語り、引き続きブログ事業に注力し、3年後に全社売上150億円という目標を打ち出した。
ライブドアは分社化以降、2008年にはじめて黒字化に成功、2009年中間期の業績も順調に推移している。好調の要因は、ポータルのトップページを利用した全面広告や、ブログを活用したクチコミ広告など、同社ならではの広告メニューが好評なためだ。
これらの広告はユニークな取り組みであることに加え、効果も高いため大手クライアントからの引き合いが強いという。「分社化前と比較して、広告売上は倍増している」と出澤氏は語る。またデータセンター事業も堅調で、メディア事業とあわせて2つの売上の柱となっている。
反面、コスト削減にも取り組み、将来性の見えないコンテンツは「聖域なき閉鎖」(出澤氏)という判断を下している。たとえば初心者向けブログサービス「nowa」、ソーシャルネットワーキングサービス「frepa」がサービスを終了した。
さらに、自前主義から他社との提携により効率的にサービスを運営する姿勢に転換した。現在、ウェブメールはGmail、画像検索は百度などと提携している。「分社化後はブログ事業やデータセンター事業など、我々がこだわってやるべきところに関してはとことんまでやる。一方で他社の方が得意なところに関しては積極的に提携戦略をとっている」(出澤)という。
今後は得意のブログ事業とデータセンター事業を活かしたBlogger Allianceに注力することで、2009年9月期の売上100億円、さらに2012年9月期の売上150億円を目指すという。
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