シャープは4月8日、経営戦略説明会を開催し、堺市に建設中の新工場を従来計画に比べ約半年間前倒しして、2009年10月から稼働すると発表した。同時に2009年3月期の連結営業損益の赤字幅が従来予想の300億円から600億円になったと下方修正したものの、株価は堅調な推移をみせ、翌日4月9日には今年2009年1月7日に付けた高値897円を更新し、900円台に乗せてきている。今後の業績見通しと株価動向について探った。
同社は4月8日、大阪・堺市に建設中の「21世紀型コンビナート」内にある液晶パネル工場を、今年10月から稼働すると発表した。液晶パネル工場への投資額は3800億円で、サイズ2880mm×3130mmの世界初の第10世代マザーガラスを採用するとしており、月産能力は7万2000枚(稼働当初は3万6000枚)を予定している。
40〜60型の大型テレビ用液晶パネルを生産する。大きなガラス基板を使用するほど生産効率が高まることから、世界最大手の韓国サムスン電子を上回るコスト競争力を実現するのが狙い。稼働を前倒した理由について、片山幹雄氏社長は「液晶パネル量産化の検証が完了したことから、操業開始を決定した。生産調整を実施していた亀山第2工場も現在はフル稼働となっており、2009年秋に堺の新工場を立ち上げなければ、需要に追いつかない」としている。
電機担当アナリストの多くは、第10世代の液晶パネル工場で省エネパネルである光配向膜パネルを業界に先駆けて2009年10月から量産することをプラス評価している。このパネルは、政府与党が追加景気対策のひとつとして導入している省エネルギー型家電製品の普及を促す新制度に対応しているもので、競合企業の製品と比べても優位性を発揮することが期待されている。
一方、2009年3月期の連結営業赤字が300億円の拡大なった背景は、液晶テレビの在庫適正化に伴う費用計上や、構造改革費用を上積みしたことによる。内訳は、200億円が液晶テレビ在庫処理費用、100億円がパネル在庫処理費用となる。結果として、北米の液晶テレビの流通在庫は3.3カ月から0.7カ月まで減少する。
今後の焦点は、提携を明らかにしたソニー向けを含めて、液晶パネル外販の需要動向が鍵を握っているようだ。北米、欧州での在庫調整は予想以上に進展しており、この4〜6月のパネル外販は高水準に推移することになりそうだ。しかし、7月以降の見通しは不透明な要素が強い。
同社の株価は昨年末から今年初にかけ急騰をみせ、2009年1月7日には897円の高値を付けた。その後は全般相場の下落加速の影響もあり、1カ月足らずの短期間で2月3日には642円と30%もの下落を強いられた。しかし、その後はジリ高歩調に転じ、4月8日の経営戦略説明会の翌日9日には、1月高値の897円を超えて900円台に乗せ、先週末4月10日には一時938円まで買い進まれ、1000円を射程圏に捉えてきた。2010年3月期も連続連結営業赤字となる懸念は残るものの、液晶パネルの採算しだいでは、株価も中期的には1000円乗せから1200円を目指す展開となりそうだ。
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