ものづくりに異変あり?! コンテンツの「逆」潮流とは

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 皆さん始めまして。七丈直弘と申します。私はもっぱら知識産業を対象としたイノベーションの研究をしています。

 知識産業とは、特に知識が「ものをいう」産業のことです。その例としては、歴史の長い化学をはじめとして、比較的新しいバイオ、IT、ナノテクなどがあります。これらの分野では、企業が利益を得るために研究開発する重要性がきわめて高いのが特徴です。

 もちろん、どんな産業でも多かれ少なかれ「金がものをいう」という側面があり、純粋に知識だけでビジネスで勝てるというわけではないのですが、いま盛んに知的財産戦略の重要性が叫ばれているのは、最近のビジネス環境の中でそれが与える影響がより高まっているからでしょう。

 いま例にあげた化学、バイオ、IT、ナノテクなどの知的財産を、たとえば「特許」と言い換えると、知識産業がどういうものかより判りやすくなると思います。そして、「特許を取って、ほかが真似できない製品を作って、利益を得る」というビジネスモデルを思い浮かべることもできるでしょう。

 実際には、特許が利益確保に効果を果たす場合もあれば、(コカコーラのレシピのように)トレードシークレットとして秘匿しないと効果を発揮しない場合もありますので、さまざまです。

 しかし、「実は『コンテンツ産業』の方がもっと知識産業の例としてはふさわしい」と言われた時に、皆さんはどのようなビジネスモデルを思い浮かべるのでしょうか。なぜこのようなテーゼが提示されるとお思いでしょうか。

 この問いについて考える、つまり、映画、音楽、演劇、文芸、写真、マンガ、アニメーション、コンピュータゲームなどのコンテンツをビジネスにしている産業について、その可能性を研究・教育するのが、私の大学での仕事です。

連載のテーマについて

 私のテーマは、知識による比較優位の源泉であるイノベーションを数理的手法によって実証的に研究すること、です。やみくもに分析だけしてもしかたがありませんので、最終的にはイノベーションを誘発するような社会や組織における条件を導こうとしています。

 アニメを例としていうなら、「どうしたらアニメ作品をつくって成功できるか?」について研究すること、になるでしょう。これをカタカナで言ってみると、「コンテンツのイノベーション」を起こすことです。

 近代的な産業では、研究開発は個人ではなく、組織で行われることが多いでしょう。このような研究開発組織をいかに組成するか、いかに育てるかがイノベーションを成功させるにはきわめて重要です。

 また、場合によっては、知識を組織外から調達する必要もあるかもしれない、それはライセンシングといった契約上の枠組の中で行われる場合もあるし、誰かが書いた論文を参考にしてマネをすることで知識を獲得する場合もあります。

 さらには、よりインフォーマルな「口コミ」のような形で「調達」することもありえます(実際、学会や学会の懇親会などの場で「知識を調達している」という企業の方が多くいらっしゃいます)。これらの様々な調達手法を時宜に応じて組み合わせ、効果的に研究開発を行う必要もあります。

 この文章でも多数出現し、また、世間でも盛んに叫ばれている「イノベーション」という語は、単に知識を生み出すことを意味するわけではありません。正確な定義は次回の連載に回しますが、先回りしていうならば、「一定期間、成功し続けること」はかなり近いのではないかと思います。

 マーケットの環境にもよるのですが、ある程度の期間成功し続ければ、新しいマーケットが確立します(シュムペーターがいった「新しい市場」です)。そのような成功を実現するカギがイノベーションなのです。

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