夏野氏は「2000年前半に上場した企業、特にモバイル系はラッキーだった。これからは地に足を付けて実力で勝負するしかない」とする一方、「広告全体では規模は減少したがネット広告は伸びている。しかも7兆円の広告費の中でネット広告はまだ十数パーセント。これから経済効果は大きくなる」と語り、ユーザーに価値ある製品やサービスを考えていくことでIT関連市場はまだまだ拡大するとの見方を示した。
この時期こそが起業のチャンスとも語る3人だが、それではなぜ日本から世界に羽ばたくITベンチャーが生まれないのだろうか? この理由については厳しい意見が飛び交う。前刀氏は「日本のネットベンチャーが海外に出て行けるはずがない。全部(米国の)まねだから」と一刀両断。オリジナリティのあるサービスを生み出すことこそが重要だと主張する。
一方で古川氏は「日本人は技術もサービスもあるが、それを説明する能力に欠けている」とした。古川氏は、エレベーターで会うくらいの短時間で投資家らに自身のビジネスの優位性や魅力を伝え、投資を決断させるプレゼンテーションを行う「エレベーターピッチ」を例に、プレゼンテーション能力の重要性を語る。さらに「ビル(ゲイツ)と(スティーブ)ジョブスの共通項はリスニング能力に優れていること。人の意見を吸い上げて自分の言葉にできる」と、単にプレゼンテーションするだけでなく、リスニングの能力も欠かすことができないとした。
このように課題が多い日本のITベンチャーだが、本当に今後海外で勝負できるのだろうか? 夏野氏は「世界に羽ばたくための環境として、日本は最高」と語る。モバイルにおいては高速な通信と高機能なデバイスを持ち、さらにブロードバンド環境も世界有数。加えて国民はサービスのクオリティにシビアだと説明し、「そこで生き残るサービスであれば、海外にだって行ける」と期待を寄せる。
古川氏は企業が世界に羽ばたくためには「失敗してもはい上がっていける仕組み作りをするべき」と主張する。「シリコンバレーでは誰もが(起業家に対して)『どんな失敗をして、そこから何を学んだか』ということを聞いた。しかし日本では一度失敗をすると、話すら聞いてもらえない」(古川氏)。
さらに前刀氏はITベンチャーのビジネスモデルに触れ、「広告収入には限界がある。価値あるサービスを作り、そのサービスに対価を支払うというモデルを作る必要がある」とした。さらに日本人が持つ技術力や表現力を生かして、ネットとリアルビジネスの融合など、新たなビジネスを生み出すことこそが重要と語った。
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