ソニーは先週1月22日、2009年3月期の連結業績予想(米国会計基準)の大幅な減額修正を発表、営業損益が従来予想の2000億円の黒字から、一転2600億円の赤字に転落することを明らかにした。4600億円の大幅な減額修正だ。
本業の儲けを示す営業損益が赤字になるのは2007年3月期以来となるが、当時は米国の映画事業で発生した一時的な損失が主因だった。翌日1月23日の東京株式市場でソニーの株価は、一時前日比144円安の1794円と1800円台を割り込んだ。同社の今後の業績動向と株価推移を探った。
減額修正の要因として同社は、エレクトロニクス、ゲーム、映画、金融の分野を挙げており、中でもエレクトロニクス分野では、合計約3400億円が想定を下回る見込みであるとした。内訳は、円高進行によるマイナスが400億円(全体では円高が1000億円の減益要因)あるものの、事業環境の悪化と価格競争激化により約2500億円、構造改革費用の追加により約300億円、持分法適用会社の業績悪化により約200億円としている。
このエレクトロニクス部門のなかでも、一番の下方修正要因となっているのが液晶テレビの赤字幅拡大だ。強いブランド力と、韓国サムスン電子に次いで第2位という高い世界シェアを保ちながら、赤字体質から脱出できないでいるのが現状だ。世界的な金融危機に伴い景気悪化が加速するなかで、消費者の低価格指向が強まり、販売台数の伸び悩みや、過激な価格競争による採算の悪化に見舞われている。
今回、今期の液晶テレビの販売台数の計画を1600万台から1500万台へと下方修正した。中鉢良治社長は「液晶テレビの採算改善に向けて、より低価格でのパネル調達が可能な体制づくりを進め、同時に設計体制を見直す。また、人件費を含めた固定費の削減も断行する」としている。さらに、ハワード・ストリンガー会長兼CEO(最高経営責任者)は、テレビとゲーム機器のネットワーク化による新たなサービスで差別化を図る方針を示唆している。
こうした大幅な減額修正を受けて、エレクトロニクス部門の改革策として、プロジュクタなどを生産する一宮テック(愛知県一宮市)の生産を打ち切り、液晶テレビ組み立ての稲沢テック(愛知県稲沢市)に集約、非正社員1000人を削減する。さらに、正社員に対しても希望退職を募り、2009年度末までに国内の正社員を2000人以上削減する見通しだ。また、代表執行役員が賞与を全額返上し、管理職の年間報酬も10〜20%カットする。
コスト削減額は、昨年2008年12月に発表したエレクトロニクス部門を対象とした1000億円から、ゲームや映画部門にも広げ2500億円に積み増した。構造改革費用は2010年3月期までに総額1700億円発生する見込みで、今期は600億円を計上する。1万6000人以上を見込んでいるエレクトロニクス部門の人員削減に加え、設計関連の人員を全世界で30%減らす方針も打ち出した。
こうした構造改革や人員削減などによる固定費縮小による効果は期待できるものの、現状では来期の2010年3月期の連結営業利益での黒字転換することはかなり困難といえそうだ。
同社の株価は2008年6月2日につけた高値5560円からほぼ一貫して下落を続け、同12月4日には昨年来安値1717円まで売り込まれた。その後、年初に一時小幅反発に転じたものの再び下降を強いられている。
解散価値から株価を判断するPBR(株価純資産倍率)は0.5倍台と割安水準にあるものの、大幅赤字となることで昨年来安値の1717円を下回り、1500円に接近することも覚悟しなければならない。円相場などにも大きく左右されるものの、本格的な株価反転上昇の可能性不透明といえそうだ。
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