パナソニックは先週末の12月19日、三洋電機を買収することで合意したと発表した。世界的な金融危機に伴い国内外で電機製品の極端な販売落ち込みが予想され、これに急激な円高による輸出採算悪化が追い打ちをかける中で、今回の買収はパナソニックの今後の業績や株価にどう影響するのかを探った。
パナソニックと三洋電は19日、資本・業務提携契約を正式に締結した発表した。パナソニックは三洋電株式の過半数を取得し、子会社化する。三洋電の全株式を対象とする公開買い付け価格は1株当たり131円。買い付け時期は明らかにされていないが、2009年2月下旬をめどに進ちょく状況を公表するとしている。
パナソニックの大坪文雄社長は「今回の提携により、両社がこれまでに培ってきた技術や製造力を結集し、グローバル競争強化にシナジーを発揮することで企業価値の最大化を目指す」としており、重点項目として挙げているのが太陽電池、二次電池などのエナジー事業。三洋電が世界シェアトップを占め、次世代の電気自動車用バッテッリーとしても注目されているリチウムイオン電池や、同社が持つ発電量世界一といわれる太陽電池デバイス「HIT」などの開発・販売を加速する。
パナソニックは11月27日、1カ月前の10月28日に発表した、2009年3月期の連結業績見通し(米国会計基準)を大幅に下方修正し、従来予想の連結営業利益5600億円を3400億円に、純利益3100億円を300億円とした。
わずか1カ月間で極端な下方修正を強いられたことで同社の株価は一段安となり、12月17日には1000円ちょうどまで売り込まれている。純利益を300億円としたことで、今3月期の連結1株利益は12.2円にまで低下しており、株価が1000円まで低下したとしても、その結果連結予想PER(1株当たり利益率)は82倍と極端に高い水準にまで上昇する異常事態に陥っている。
欧米を中心に薄型テレビなど主力のデジタル家電製品の売上が急速に落ち込んでいるのに加え、下期の想定為替レート1ドル=100円、1ユーロ=135円に比べて現実の為替レートは大幅な円高で推移しており、輸出採算が大幅に悪化する可能性が強まっている。来年の年明け以降の世界景気の状況や円相場次第では、2009年3月期の最終損益が赤字に転落する可能性もある。さらに、市場参加者が最も懸念しているのは、現在のような世界的な不況が長期化して、来期の2010年3月期の業績が一段と悪化する懸念だ。
パナソニックは、今回の三洋電の買収で総額5600億円の負担や、財務内容が見劣りする三洋電の子会社化によって財務内容が悪化することも想定される。当初は三洋電株の売却価格について1株=200円台後半としていたゴールドマン・サックスグループが、急転直下1株=131円でのTOB(株式公開買い付け)に応じた背景には、交渉を長引かせても三洋電の一段の業績悪化が顕在化して、不利な状況になるとの判断があったようだ。
こうしたことから、同社の株価は年末から来年初にかけて、一時的には1000円の大台を割り込むことを覚悟しておいたほうがよさそうだ。株価反転上昇の時期や、底打ちの水準は判断し難い情勢となっている。
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