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主力IT関連株の下落率で明暗を分けた理由

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 先週末10月10日の東京株式市場は、日経平均株価が一時、前日比1042円安の8115円と9000円台を大きく割り込んで、8100円台まで叩き込まれる記録的な暴落に見舞われた。

 株価指数先物市場でも、2001年9月の米同時多発テロ以来7年ぶりにサーキットブレーカー(急激な値幅変動があったとき、市場参加者に冷静な判断を求めるために取引所が一時売買を中断する措置)が発動され、完全なパニック状態となった。

 終値ベースでも日経平均株価は前日比881円安の8276円という記録的な下げとなり、下落率は、9.62%に達し、1987年10月のブラックマンデー(下落率14.90%)、1953年3月のスターリン暴落(同10.00%)に次ぐ史上3番目(戦後の東証開所以降)にランクされる大幅な崩落となった。日経平均株価は、先々週の2日から10日までのわずか7営業日続落で、3091円、率にして27%と30%近い劇的な暴落を経験したことになる。

 約80年前の世界大恐慌以来とされる今回の世界的な株価大暴落の背景には、市場関係者のあいだに「金融危機はかなり長引きそうだ」との疑心暗鬼が根強く存在するためだ。米政府が紆余曲折を経てようやく成立に漕ぎ着けた金融安定化法についても、米財務省による資産の価格設定や購入・運用方法が明確でないなど、市場には「実効性に乏しい」との見方が多い。世界同時株安に背中を押されるように、ポールソン米財務長官が、金融機関への公的資金注入を示唆したものの、注入の具体化には時間がかかるとの見方が根強い。

 さらに世界同時株安は、実体経済にも悪影響を及ぼしており、米国の景気悪化懸念などから、米自動車最大手のゼネラル・モーターズ(GM)の株価が9日急落、1950年以来58年ぶりとなる株価5ドル割れとの崩落に見舞われた。自動車産業などに支えられた米国の実体経済が混乱すると、円高加速も加わり米国向け輸出比率の高い日本の自動車、電機、精密機械など主力輸出企業の業績が悪化する懸念が高まる。

 また、大和生命や、J−リート(不動産投資信託)のニューシティ・レジデンス投資法人の経営破綻などで危機感を強めた金融機関の貸し渋りが一段と広がり、リストラの拡大、消費低迷を引き起こす可能性も強まったとの見方も株価下落を加速させた。

 10日に開催され先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、公的資金の金融機関への注入など、金融危機克服に向けた異例の行動計画を明らかにした。G7を受けて、14日のアジアや欧州の株式相場は大幅反発に転じているものの、米金融機関への公的資金注入など米国当局による具体的な行動が実現しない限り、世界株価の継続的な回復は難しいとの見方も多い。

 こうしたなかで、東証1部上場企業の中で、時価総額が大きく日本を代表する企業30銘柄を選び出した「TOPIX(東証株価指数)コア30銘柄」の中から、IT&ネット関連の9銘柄について、各銘柄の年初来高値からの株価下落率を検証してみた。

 別掲の表を見ても分かるように、下落率の1位は63%のソニー、2位は任天堂、3位はキヤノンとなっている。逆に、下落幅の小さいのは1位NTTドコモ、2位NTT、3位日立製作所となっている。株価が下落した背景には、当然のことながら今期下期以降の業績見通しや、年初来高値をつけるまでどの程度株価が値上がりしたのかなどの過去の値動きが大きく影響している。

 しかし、ここでは暴落といえるほど極端に悪化した相場環境のなかで、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、配当利回りといった、通常株価の物差しとなる株価指標が、ことごとく無視される傾向が強まるなかで、信用取引の需給関係が株価の下落に大きく作用していることに注目した。

 ソニーの直近(10月3日申込現在)の東証信用倍率は13.71倍と、将来の売り要因となる買い残が、売り残に比べて極端に膨らんで、将来的な株式の需給が極端に悪化してくることが分かる。逆に株価の下落率が比較的小幅に留まっているNTTドコモ、NTT、日立の3社の信用倍率はいずれも売り残が買い残を上回る「売り長」状態にあり、将来の株式需給は非常に良好といえる。

 信用需給の良し悪しでこれまでの株価の下落が大きく左右されてきたのはもちろん、今後全体相場が反発に転じると仮定した場合でも、この信用買い残の重みが圧迫要因となり反発が妨げられる一方、買い残の少ない銘柄(売り残が多い銘柄)は、逆に上昇が加速する可能性が高いといえそうだ。

IT&ネット関連のTOPIXコア30銘柄の下落率(年初来高値と10月10日前場終値比較、単位:円・%)
銘柄 コード番号 年初来高値 10月10日前場終値 下落率 東証信用倍率
ソニー 6758 6300 2330 63 13.71
任天堂 7974 64500 33600 48 3.27
キヤノン 7751 5820 3070 47.3 2.72
パナソニック 6752 2515 1416 43.7 4.3
KDDI 9433 842000 485000 42.4 2.02
日立 6501 843 544 35.5 0.51
NTT 9432 581000 387000 33.4 0.93
NTTドコモ 9437 189000 139000 26.3 0.85

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