Red Hatが、仮想化技術は将来的にすべてのOSに無料で搭載されると予想する一方で、自社製品の品ぞろえを充実させるために取り組んでいる2つのハイパーバイザの役割を詳しく説明した。
Red Hatは現在、新たに買収したQumranetが開発していた「Kernel-Based Virtual Machine」(KVM)を利用して、カーネルベースのハイパーバイザを開発中だ。同社で製品および技術部門を率いるPaul Cormier氏は英国時間9月10日、これが実現すれば、仮想化に最適化された新しいハードウェアの性能とパワーマネージメント機能が向上すると述べた。
だが、Red Hatは、少なくとも2013年までは同社製品の「Red Hat Enterprise Linux 5」(RHEL 5)にバンドルされているハイパーバイザ「Xen」のサポートを続ける意向だ。これはRHEL 5のサポートの一環であると同時に、x86ベースの旧世代ハードウェアにおける仮想化技術をサポートするためでもある。
「KVMはクリーンで、アップストリーム側のLinuxコミュニティーに受け入れられている。すべてのLinuxディストリビューションにこの仮想化技術が組み込まれるだろう。KVMは後から追加したり、移植したりする技術ではない」とCormier氏はロンドンで行われたRed Hatの報道陣向けイベントで語っている。
そのうえでCormier氏は「一方、Xenを採用したのは当時としては正しい決断だったし、今でもそうだ。われわれは誰よりもXenプロジェクトに貢献しているし、XenはRHEL 5にしっかりと組み込まれている」と続けた。Xenおよび「VMware」はKVMよりも早い時期に開発されたため、仮想化に最適化されていないIntelのx86ベースのハードウェアに対応する必要があったと同氏は説明し、次のように述べた。「VMwareとXenは多くのタスクをこなさなければならず、それが性能に影響を与えている」
このため、Cormier氏によれば、現時点での仮想化技術の用途(サーバのおよそ10%に搭載されている)は、主としてテストや開発目的だという。たいていのユーザーは、性能や節電の面で、実稼働環境にある規模の大きいサーバに実装できるほどに仮想化技術を最適化できないと考えている。
仮想化技術は今後5年以内に90%のサーバに実装されると予想されているが、そのためには、仮想化技術によるハードウェア管理を強化する必要がある。ここがKVMの出番だ。KVMはカーネルに統合されており、IntelとAMDが新型プロセッサで仮想化のために提供している拡張命令セットを使用できるからだ。
今回の報道陣向けイベントではRed Hatの最高技術責任者(CTO)であるBrian Stevens氏も発言し、「Xenは旧世代のハードウェアにおいて仮想化技術の草分けとなったが、KVMは新世代のハードウェアを念頭に置いて作られている」と語った。Red Hatは仮想マシン用の共通APIを提供する抽象化ライブラリ「Libvirt」を開発し、すでに広く採用されているので、両方のハイパーバイザを使用してもユーザーには問題は生じない。
最近になってMicrosoftが仮想化市場で活発な動きを見せているが、Red Hatはこれを意に介さないと主張し、Microsoftが仮想化製品「Hyper-V」を実質的に無償で提供しているのは、純粋に商用のVMware製品を攻撃するためだけだと指摘した。「MicrosoftはVMwareに目を付けている」とCormier氏は述べている。
Cormier氏は、RHEL 5は既に無償で仮想化技術を搭載していると指摘した。「われわれは仮想化技術を追加したときに、RHELを値上げしなかった」とCormier氏は述べ、オープンソースモデルは仮想化サーバに非常に適していると語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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