リコーは先週の8月27日、世界最大の独立系事務機器販売会社の米アイコンオフィスソリューションズ(ペンシルベニア州)を16億1700万ドル(約1720億円)で買収すると発表した。
複写機など事務機器の国内需要が飽和状態となる中で、精密機器大手各社は欧米を中心とした海外市場の開拓に活路を求めざるを得ない状況となっている。同日午後9時過ぎからの記者会見で同社の近藤史朗社長は、「買収により世界中でリコーグループのサービスを提供できるようにすること」を、今回の目的として明らかにしている。
アイコン社は、欧米を中心に400カ所以上の販売拠点を張り巡らす大手で、取り扱う事務機器の60%がキヤノン、30%がリコー製品となっており、2007年9月期の連結業績は、売上高約4400億円、同純利益約121億円の実績となっている。
市場関係者によると「今回の買収は、アイコン社の方から持ちかけたもの。それも、最初はキヤノンへ話を持ち込んだが、買収金額などで折り合わず、キヤノンが断ったようだとの観測が浮上しているほど」としている。
確かに買収額は、1株当たり17.25ドル(8月26日までの過去60日間の株価の平均に対し、33%のプレミアムを上乗せしたもの)を基準にし、日本円にして1720億円に膨らんでいる。この1720億円は、巨額で、買収資金の大半を社債発行や、銀行借り入れなど外部からの資金調達に頼ることになり“大きな賭け”であることは確かだ。
この買収発表翌日28日のリコー、キヤノン両社に対する株式市場の反応は非常に鮮明にあらわれた。リコーの株価が一時、前日比117円高の1844円まで買い進まれた(終値は1777円)のに比べ、キヤノンの株価は一時、同280円安の4770円まで売り込まれ(終値は4790円)た。
準大手証券のアナリストは「リコーの買収は、資金の借り入れなどで短期的には財務面の負担になるものの、中期的には大きなプラスになると評価されたようだ。半面、キヤノンについては買収を断念したとの観測が広がったこともあり、“逃がした魚は大きかったのでは”との見方が浮上したことから売りが先行する展開となったようだ」としている。
クレディ・スイス証券は8月28日付のリポートで、「リコーにとっては長期的にポジティブ。キヤノンに対しては極めてネガティブ。アイコン社の取り扱いは、アイコン社が販売する事務機器ハードの数量ではキヤノンが約6割、リコーが約3割、コニカミノルタや京セラミタが1割程度。キヤノンが今後欧米でシェアを失う可能性がある」と指摘している。
同社の株価は、6月30日に年初来高値1986円をつけて以降、下落トレンドとなり、7月16日には1605円まで下落した。その後は1700〜1900円までのボックス相場となっていた。先週末8月28日終値1822円で試算した連結PERは12倍台と割安水準に止まっている。今回の大型買収により、将来性について大きく道が開けたことにより株価上昇にも期待が持てそうだ。当面は株価2400円台乗せが目標となりそうだ。
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