「祖母への思い」から生まれた口コミサイト「老人ホームマップ」 - (page 2)

原田和英(アルカーナ)2008年08月27日 10時00分

「観光地から探す」という検索方法の理由

 クチコミの検索方法としては、住所、駅名、施設名、地図から検索できるが、それ以外にも「観光地」から探すというユニークな検索方法も準備されており、富士山や東京タワーといった観光地を起点に老人ホームを検索できる。

 窪田氏によると、観光地に近い施設は、住む人にとって価値のあるだけでなく、そこを訪れる人たちにとっても足を運びやすい心境にするという効果を持っているそうだ。確かに、老人ホームがテーマパークなどの近くにあれば孫などは行きたがるだろう。詳しくは以下の窪田氏のブログエントリー「ディズニー社が仕掛けているシニアタウン「セレブレーション」」をご参考頂きたい。

練られたクチコミの投稿方法

 クチコミのランキングは「清潔さ」「スタッフ」などの各項目と場所のマトリクスで準備され、ニーズにあったランキングを見ることができる。

 投稿仕様が少し独特で、「総合点、雰囲気」などの各項目を1つずつ評価し投稿するのではなく、まず項目を1つを選び、それだけに対して5つ星で評価する。もっとも何度も投稿できるので、複数の項目を評価したい場合には投稿を分ければ良い。「各1つの項目に対して、しっかりとした情報が欲しい。複数評価のコメントだと伝えたいことがぶれてしまうから」と窪田氏は説明する。

 また「親が入居、噂を聞いたなど」といった施設との関係も記載されるため、入居者以外の情報も集められるほか、情報の信頼度をそこから判断することも可能だ。さらには年代の評価もあるため、年代における価値観の揺らぎを吸収する仕組みも整えられている。なおユーザーは40代、50代がメインで親の介護を考える人たちが主に利用しているという。

 クチコミの投稿時に任意でメールアドレスを公開できるため、クチコミの信頼度を上げたい人には便利だ。また、そこからほかのユーザーが連絡を取ることもでき、ユーザー同士のコミュニケーションを促進する仕組みが整えられている。

 介護に関するQ&Aも充実しており、ユーザーのニーズを満たす機能が十分に準備されている。ほかにもご意見番というコーナーでは、ある問いに対して「はい」「いいえ」の二択で回答できる。たとえば現在では「子供扱いじみる危険を冒しても、親しみは積極的に表現するべき?」という問いへ賛否の投票とコメントできる。ユーザーの参加ハードルを下げながらも意見を収集する仕組みだろう。

 このようなQ&Aやご意見版の設置した意図として、窪田氏は「悩みを共有できる場所が求められているから」という。このような悩みは「恥ずかしい」「プライベートだから」ということで、おおっぴらには話し合えないような雰囲気がある。しかし、「そのような悩みは他の人にとっては選択肢を考える上でとても価値があり、また自分自身にとっても悩みを相談できるという点で価値がある。また私自身、どのような悩みがそこにあるのかを知ることができるという点で非常に参考になる(窪田氏)」という。

今後の展開

 同社のビジネスモデルは、コンテンツ提供が主軸となっている。すでに書籍の出版やニフティへのコンテンツ提供を行っているほか、老人ホーム向けのコンサルティングも展開。施設においては「選択前の判断基準」「入居後の満足度」という2つの情報が選択者にとって重要となっており、それに関したコンサルティングを強みとしている。

 窪田氏はこのサイトを立ち上げた理由について「自分が『おばあちゃん子』だったこと」だと語る。ある時、同氏の祖母が老人ホームに入居することになったが、その施設が入居者にとって刺激のないもので、車椅子でテレビとベッドを往復するだけの生活になった祖母の足は壊死し、切断せざるを得ない状況となってしまったのだという。

 「もっと、いろいろなことができたんじゃないか」--そう感じた窪田氏は、バンドを組んでのライブ活動など、入居者に「生き甲斐」を提供することを考えてきたのだという。しかし、そういった活動は一時的な解決にしかならない。「もっと大きな視点で、自分がじいちゃんになった時に施設を楽しめるようにするにはどうしたらいいのか」そういった考えが現在の老人ホームマップにつながっていったのだという。

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