松下電器が大幅増益--新興国向け寄与しリチウム2次電池も期待

 2009年3月期決算企業の第1四半期(2008年4〜6月)の決算発表が先週で前半のピークを越えた。全般的には、期初予想に比べて原料高、米景気の減速などにより減益幅がやや拡大する傾向にある。さらに特徴的なのは、ほぼ同様の業種・業態の企業にあっても業績が大きく異なり明暗が極端に分かれるケースが目立っている点だ。

 例えば、同じ総合電機でも、通信関連設備投資の減速でNECが大幅減益となった半面、懸案だったHDD(ハードディスク駆動装置)事業のリストラ策が進展をみせた日立製作所は大幅増益となった。また、家庭電器製品でも欧米での販売が伸び悩んだソニーの第1四半期の連結純利益が前期比47%減となったのに比べ、新興国向けが寄与した松下電器産業は逆に連結純利益が同86%増益となった。その松下電器の業績と株価について今後の動向を探った。

 松下電器が7月29日に発表した2009年3月期の第1四半期(2008年4〜6月)の連結決算は、売上高こそ2兆1519億円(前年同期比4%減)と微減収となったものの、営業利益1095億円(同48%増)、純利益730億円(同86%増)と利益面では大幅増益となった。新興国向けを中心に薄型テレビや、洗濯機などの白物家電が好調な売上推移となったことが寄与した。

 売上高が減少したのは、日本ビクターが連結対象子会社から外れたことなどによる。しかし、主力の薄型テレビの売上が、前年同期比26%増の2698億円となり、その中で液晶テレビの売上が同68%増の959億円、プラズマテレビも同16%増の1496億円と高い伸びを達成したのをはじめ、デジタルカメラや、DVDレコーダーも好調に推移したことが寄与した。ただ、2009年3月期の業績については、従来想定を据え置き、売上高は9兆2000億円(前期比1%増)、営業利益5600億円(同8%増)、純利益3100億円(同10%増)としている。

 今後の松下電器の業績動向を判断するうえでリスク要因となるのは、まず円相場だが、現在の1ドル=107円前後の水準で推移すると仮定すれば、為替差損が生じる可能性は少ない。また、懸念されている原料価格高騰による利益圧迫は、第1四半期で100億円に止まった。これが、第2四半期以降大きく拡大する懸念は少ないと見込まれる。さらに同社の場合、他のメーカーが苦戦している北米市場でも製造・販売体制を強化していることや、国内を含めて販売力の強化に軸足を置いていることが、さらに強みを発揮することになりそうだ。

 また同社は7月30日、大阪府大阪市住之江区に新たにリチウム2次電池工場を建設すると発表した。同社は新工場を源泉(極板生産)工程から電池セル組立、充放電工程、出荷までを一貫して行える主力工場と位置づけ、守口工場および和歌山工場を含めて国内3拠点のリチウム2次電池の一貫生産体制を構築する。

 同社は、リチウム2次電池の安全性を確保するためブラックボックス技術である源泉工程を重視して、国内の守口および和歌山拠点と連携がしやすくロジスティクスに優れる大阪市住之江区に新工場を建設する。新工場は、投資額約1000億円で2期に分けて建設され、年産6億個(月産5000万個)のリチウム2次電池の生産能力を有する主力工場となる。2008年12月に着工、2009年10月に源泉生産を開始、2010年4月に第1期の電池セル生産を開始する予定だ。

 同社の株価は6月6日に年初来高値の2515円をつけて以降調整を強いられていたが、7月22日に2115円安値をつけて反転上昇基調に転じた。先週末8月1日の終値は2300円まで回復をみせた。先週末水準の同社の連結PERは18.2倍と割高感はない。中期的には年初来高値の2500円水準へ向けての上昇が十分期待できそうだ。

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