maneoでは、ボロワー(融資を受ける人)には、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を通じて、借り入れの目的や経済的な状況などをPRしてもらいます。われわれは書類を郵送してもらうことで本人確認を実施、さらにその情報が確かかどうか、レンダー(融資をする人)自身が質問できる仕組みがあります。これによって、レンダー、ボロワー双方にきめ細かいサービスが提供できるということになります。
銀行では、個人の普通預金だと0.01%ほどの金利しかつきません。その一方で融資を受ける場合、たとえばウエディングローンなどでも金利は8〜9%ほどかかります。この金利の差は、銀行側がマージンやコストを考慮しているところにあります。
銀行には人・店舗・システムを維持するために膨大なコストがかかります。それだけでなく、デフォルト(債務不履行)のリスクを考慮しなければなりません。さらに、利益となるマージンも必要です。
ソーシャルレンディングの場合、インターネットを使うことによってコストを相当削減できる可能性があると思っています。弊社は店舗がありませんし、オペレーションもITで極力省略化できます。また業務フロー上も簡素化してるので人のリソースも少なくて済みます。
さらに銀行のような巨大な基幹システムも持たないのでコスト削減できます。デフォルトのリスクについては、レンダー1人1人がボロワーの属性を確認する事によって取っていただくことになります。この上で私たちがマージンを頂くという形になります。
このようにして削減したコストはユーザーに還元できると考えています。ボロワーとレンダーのマッチングはオークション形式で提供するので、ボロワーにとっては金利の引き下げ効果も得られるという、大きなメリットが出てくると思ってます。
たとえば私と知り合いのAさんとの間で、「Aさんが私に1万円貸す」というのは何も問題ありませんが、Aさんが私を含めて複数の人に継続して何度もお金を貸す、となると貸金業としての登録が必要になります。
ソーシャルレンディングのビジネスモデルの中で一番難しいのは、お金を貸すレンダーが複数の人に継続してお金を貸していくという部分です。ここをどうクリアするかがまず1つのポイントになりました。
maneoでは、ボロワーとレンダーを結びつけるマーケットプレイスを提供します。ユーザーから見れば、maneo上でマッチングしてるだけで利用できるようになっているのですが、法律的には、maneoがボロワーに貸し付けし、その金銭債権に対してレンダーが匿名組合出資契約を行うという形にしました。これによって、レンダーが貸金業の登録をする必要はなくなります。
そこで弊社は貸し付けを行うための貸金業登録と、匿名組合出資契約を募集するための金融商品取引業が必要になりました。貸金業の方であればきちっとした書類を出して用件をみたした形で東京都に登録すればできます。金融商品取引業は、金融庁に対して登録をします。金融庁に対しては、このような「貸金業プラス匿名組合出資契約」という形で金融商品取引業として的確性があるかどうかいうことを審査されていました。
その話し合いの結果、ボロワーの募集やSNS、マーケットプレイスの運営を行うなど「借り手」のサービスをまとめる「maneo」、レンダーの募集や顧客管理、匿名組合の組成など「貸し手」のサービスをまとめる「maneoマーケット」、エスクローサービスを提供する「maneoエスクロー」として、分社化してサービスを行うことになりました。
海外のモデルについては、法律上の問題と、日本の社会になじむかどうかといった問題の2つがあると思います。
たとえば、米国で提供されているソーシャルレンディングサービスでは「金銭債権をレンダーに直接売却する」というビジネスモデルを展開しているところもあります。しかしこれを国内やってしまうと、社会問題になります。さらに通常、債権の回収は弁護士や債権回収業者しかできないため、金銭債権の保有者が直接回収に行くことも法的にはグレーです。
また先ほどお話したように、レンダーが複数の金銭債権を持つ場合、金融業登録が必要になるという点もあります。他社のサービスをそのまま日本で展開しようすると、このような問題があるのではないかと思います。
われわれも国内の法律をクリアするのに、膨大な時間とコストをかけました。共同創業者のシー・ジェフリー チャーとともにソーシャルレンディングの事業を立ち上げることが決まったのは2006年8月。そこで勉強会をはじめましたが、会社の設立は8カ月後の2007年4月になりました。
2点目には、実際に「サービスがなじむか」という問題があります。海外でソーシャルレンディングを利用する場合、いわゆる“おまとめローン”的な利用も少なくありません。たとえば、「数社から利率30%程度で借りてます、それを1本にまとめて利率20%で貸してください」というボロワーも少なくありません。日本でそういった目的に対しての貸し付けをするのは、なかなか勇気のいることではないかと思っています。
ある程度のITリテラシーを持っており、300万円以上の年収のある方をターゲットとしています。また、利用機会については、ライフイベントでの借り入れを想定しています。たとえば、結婚や出産、子供の教育資金などです。ほかにも子供が生まれたので2シーターの車を4シーターの車に買い換える、といったマイカーローンや、住宅を持っていれば子供部屋を改装するためのリフォームローンも考えられます。
レンダーも、ボロワーがどういう目的でお金を必要としているかを見るでしょう。そういうときに「投機のための資金が欲しい」という人より、「お子さんが生まれたので安全を重視したファミリーカーに買い換えたい」とういう人にお金を出しやすいのではないかと思います。
もう少し具体的に言えば住宅ローンと、消費者金融の間が顧客ターゲットとなります。銀行で借り入れる際の金利がだいたい7〜10%なので、そこからスライドして6〜8%の金利で借りられる仕組みを作っていきたいと考えています。たとえば「銀行でウエディングローンを借りれば8%だけど、maneoで6.5%くらいで出してみよう。それで成立すればいいし、ダメであれば銀行で借りよう」といった使い方を想定しています。相対的に銀行が提示する金利より若干低く成立するローンですね。
われわれのサービスでは、書類で本人確認は行いますが、サイト上では匿名性を守りつつ、その人の人となりがわかるように配慮し、そのためのインフラを用意してます。ブログで情報発信もできれば、1対1のコミュニケーションもできる機能もあります。また好きな仲間が集まってフォーラムで情報交換できるという機能も用意してます。匿名ですが、その人がなにを考えてるかわかるインフラがあるのです。
匿名性は確保しなければならない、ただし匿名だからといってその人がどんな人なのか特定できないわけではない。つまりお金を貸すという行為において、その人が実名でお金をかりる必要はありません。その人の人となりがわかれば「いい理念を持ってる」「趣味が一緒だ」「共感できる」といったポイントでお金は貸せると思います。
たとえば、先ほどの車の買い替えニーズの例であれば、ブログで「子供が生まれます」と書いて、コミュニティで「子供が生まれるので、2シーターの車を下取りしてくれるいい業者さんをしらないかな?」「ファミリーカーに乗り換えたいんですが安全性について教えてください」といった情報共有をして、資金が必要であれば実際借りていただき、購入後は、「この車を買いました」とブログに投稿する--といった感じでその人のライフイベントを共有していってほしいです。欧米とのサービス違いになってきますが、匿名だけどシンパシーを感じられて、お金を貸し借りするインフラを提供することを念頭に置いています。
ブログやコミュニティは、ユーザーを活性化させるサブの要素ではなく、むしろメインのサービスと考えています。単純にお金を借りたい、お金を運用したいという方には、もちろんそういう使い方もしてただいていいのですが、お金を貸し借りするという行為に対して軽々しく考えないでしょう。そうなると人となりがわかる仕組みが大事になってくるのかなと思います。
SNSを立ち上げてそこにファイナンスの機能をつけたとしても、そこを自分達だけで活性化することが難しいというのは承知しています。これについてはすでにユーザーベースを持ってらっしゃる方と一緒にやらせていただくのが早道だとは思っています。
単純なSNSとしてでなく、もっと親和性の高いサービスを提供しているところも含めて、現在お話をしています。
また、ボロワーとレンダーでは、SNSやマーケットプレイスの利用方法が異なると考えています。レンダーに関しては、お金を貸してリターンを得ることが利用目的となるため、継続性や反復性があると思います。しかし、ボロワーがお金を借りるのはライフイベントの時期が中心で、期間的には半年から3年といった期間でしょう。そして借りたお金を返せば次のライフタイムイベントまではサービスから一度離れます。そのため、ボロワーとレンダーでSNSの使い方も変わるため、機能に関しても将来的には分けていこうと考えています。
「ライフイベントごとにお金を借りる」ということで言えば、銀行でも無担保の目的別ローンというのをやっていますが、この分野の貸付残高は7〜8兆円あります。ただソーシャルレンディングとなると、ITリテラシーの高く、安定したキャッシュフローのある方、ということになるので7兆円からは絞られます。しかし半分であっても約4兆円のマーケット。これは大きな市場だと思います。
また、無担保ローンの利用目的が、結婚や教育ということであれば、われわれのターゲットとする20代の後半から40代前半の年齢層に当てはまることになりますね。この方々は、インターネットは日常的に使っている人も少なくなく、弊社のサービスを使うだけのITリテラシーはあると思っています。
流行するしないかと言われればわれわれの努力次第ですが、日本にはかつて「頼母子講」というものもありました。目標としては、サービス開始後3年で200〜300億円(の貸付残高)は取っていきたいと思っています。やってみないとわからない部分もありますが、そこに賭けるだけのマーケットはあると思っています。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)