iPhoneの市場投入で注目を集めるソフトバンクモバイル。同社の取締役副社長である松本徹三氏が7月23日、ワイヤレスジャパン2008において同社の戦略や今後の取り組みについて語った。
特に強く主張したのが、「ユーザーに対する価値の向上」だ。現在、ソフトバンクモバイルが純増シェアで好調を維持していることについて触れ、ホワイトプランや端末の割賦販売制導入など、これまでの取り組みはすべて「ユーザーに最大の価値を提供する」(松本氏)ことを目的にしていたと話す。
携帯電話の価値は、サービス、ネットワーク、端末の3つから成り立っていると松本氏は言う。欧米ではNokiaやAppleといった端末ベンダーがサービスの分野に進出して勢力を伸ばす一方、ネットワークのみを提供する携帯電話事業者の力は弱まっている。だが日本では携帯電話事業者がネットワークだけでなくサービスや端末も含めて中心的な役割を果たしてきており、これによってユーザーに最大の価値を提供できると主張。近年では垂直統合的な日本の携帯電話業界が問題だという声が増えているが、松本氏は「逆に欧州の通信事業者は、日本の動向に注目している。確かに問題はあるが、エコシステムとしては悪くないのではないか」との考えを示した。
とはいえ、これまでのように通信事業者がすべてを仕切るという考えはないと松本氏は言う。例えば端末については「楽市楽座」の考えのもと、通信事業者はあまり細かな要求をせず、メーカーに任せる部分は任せるという方針をとっていく。その代表例がiPhoneで、Appleの思想を重視してハードやサービスはそのままに、販売や宣伝面でサポートしているとのことであった。
iPhone利用者の場合、5985円の「パケット定額フル」を契約する必要がある。この点について松本氏は「iPhoneの購入者はインターネットを楽しみたい人。パケット定額制を付けておかないと、ユーザーが勘違いして10万円もの通信料が請求されかねない」とその理由を説明した。
松本氏は、日本の携帯電話事業者の場合、コンテンツプロバイダーへの課金代行手数料が10%前後であるのに対し、AppStoreが30%と高額であること、さらに日本からiPhoneのようなものが誕生しなかったことに対して「少し悔しい」と本音も覗かせた。だが同時に「悔しければ、我々がiPhoneのようにユーザーに価値を与えるものを作っていけばいいのではないか」と意気込みも示している。
今後の事業展開については、インターネットの利用端末がPCから携帯電話に移っているとして、音声市場が縮小する中、データ通信による収入を伸ばす必要があるとの認識を示した。ビジネスモデルとしては現在の通信料や課金代行モデルだけでなく、PCと同様に広告モデルも重要になってくると予測する。ただし、「画面の狭い携帯電話でバナー広告を展開したら、ユーザーにそっぽを向かれてしまう」とし、ユーザーの行動や情報に連動した広告など、ユーザーに受け入れられる新しい広告形態の必要性を訴えた。
2010年頃の商用化が見込まれる第3.9世代携帯電話の方式については、導入コストが比較的少ないHSPA(HSPA Evolution、eHSPAとも呼ばれる高速化技術で、HSDPAの発展系)を採用する方向で検討しているという。NTTドコモが推し進めているLTE(Long Term Evolution)の導入については「2010年時点ではコストアップの要因になる。(関連機器の価格が低下する)2012、2013年頃になるだろう」と話している。
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