ニコラス・カー氏の新たな主張--マルチタスク脳への警鐘 - (page 2)

文:Charles Cooper(CNET News.com)
翻訳校正:ラテックス・インターナショナル、編集部
2008年06月19日 10時00分

 前チェスチャンピオンJosh Waitzkin氏は、コロンビア大学に戻り、以前の教授の講義を受けた。講義を担当していたのは、Waitzkin氏が「わたしの人生で最も重要な大学教授」と称するDennis Dalton教授であった。記事の内容はこうだ。

 ガンジーの非暴力主義の誕生についての、心奪われる75分間のディスカッション中にFacebookを見ていたり、New York Timesをチェックしていたり、写真を編集していたり、何かを書いていたり、People誌を呼んでいたり、EbayやUrban Outfitters、J. Crewなどでジーンズ、ワンピース、セーター、靴といったものを購入していたり、ソーシャルカレンダーを整理していたり、GmailやAOLで電子メールを送受信していたり、ソリティアで遊んでいたり、他の講義の宿題をしていたり、AIMでチャットしていたり、Expediaでチケットを購入していたりする学生を見るうちに(信じがたいあまりにリストを作成してしまった)、わたしは次第に打ちひしがれていった。教室の後ろにいたわたしからは、インドの母親たちが集中砲火から逃れるため、いちかばちかで子供たちを深い井戸に投げ込む様子がDalton教授の鮮やかな説明によって描き出されるその間、目の前の女子学生がUrban Outfitters.comにクレジットカード情報を入力しているのが見えた。とうとう気に入った靴を見つけたのだ!

 講義が終わった後、わたしはがっかりしながら電車で帰宅し、学生たちへの手紙をしたためた。手紙は翌日、Dalton教授によって配られた。その後、わたしは調査を開始した。残念なことに、わたしが見たのは例外的な事例ではなかった。米国中の教室が、マルチタスクウイルスに侵されている。教師は居場所を失っている。2008年はFacebookが米国の教室に進出した年だ。学生たちは、マルチタスクという彼らの世代特有の強化能力で流行を支えている。残念ながら、人間の精神は処理能力を大きく落とすことなしに複数の作業をこなせないというのが実情だ。

 ここで、インターネットはどの程度非難されるべきなのだろうか。多すぎるテレビの影響、あるいはしつけ不足についてはどうなのか。おそらく、すべてが原因なのだろう。Carr氏は、エッセイの中で、インターネットの影響は文化の他の部分に現れていると述べる。例えば旧メディアの世界は、歴史のちりと消えないよう、インターネットに普及した様式をいくつか取り入れている。Carr氏は次のように述べている。

 人々がパッチワークのようなインターネットメディアに順応した今、従来のメディアは聴衆の新たな期待にこたえる必要がある。TV番組は字幕やポップアップ広告を加え、雑誌や新聞は記事を短くし、要約を導入し、拾い読みしやすいスニペットをページにちりばめている。2008年3月、New York Timesがすべての版の2ページ目、3ページ目を記事の抜粋専用にすることを決定したとき、同紙のデザイン担当ディレクター、Tom Bodkin氏は、「ショートカット」により、忙しい読者はその日のニュースをすばやく「味わう」ことができ、実際にページをめくりながら記事を読むという「あまり効率的でない」方法をとらずにすむと説明した。古いメディアには、新しいメディアのルールに従う以外、選択肢はほとんど残されていない。

 Carr氏でさえ、どの程度まで進行しているかは完全には分かっていないが、これは刺激的なアイデアだ。Carr氏は、インターネットの利用が認識力にどう影響を及ぼすかに関する最終的な判断は、広範囲にわたる神経学的および心理学的な実験を待たなければならないことを認めている。その通りだろう。

 それまで、Carr氏の意見は支持を得られないかもしれないが、少なくとも、彼が重要な話を始めたことは確かだ。

著者紹介
Charles Cooper
CNET News.com解説記事担当編集責任者

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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