これまで広告主は、PCサイト、ケータイサイトと分けてプロモーションを行ってきました。PCとケータイでは異なるユーザーが存在すると考え、それぞれに対し個別のアプローチを行ってきたわけです。
例えばダイエットサプリの広告であれば、PCの「Yahoo!」では20-30代女性をターゲットとし、実写のお腹を使ったリアルなクリエイティブ訴求、ケータイの「Yahoo!モバイル」では、10代女性をターゲットとし、イラストを使ったポップなクリエイティブ訴求を行いました。
しかし、同一のPCサイトを、PCでもケータイでも見る状況が生まれた場合、どうでしょうか?広告を見るターゲットは異なるのに、果たして同様の訴求でよいのでしょうか。
そこで私は「デバイスターゲティング」という手法を提唱します。同じYahoo!をPCから見た時とケータイで見たときでは、別の広告を掲出する必要があると考えるからです(現状ケータイのPCサイトビューアーは、PCのサイトを簡略化してみせる方式を取っています)。
例えば、ケータイでのプロモーションでは、ドコモの905iというデバイスのみにターゲティングしてメールを送る手法で高い効果を出したという事例があります。一方、PCでのプロモーションではデバイスによって広告を出し分けた事例がほとんどありません。
PCは皆がほぼ同じスペックのものを、机の前で利用すると想定されており、人によって利用シチュエーションが異なることが少なかったからです。しかし、PCサイトの閲覧にもモバイルという環境が加わった場合、デバイスによるターゲティングが必要になると考えます。
今後はYahoo!をはじめとするバナー広告、そしてGoogleの検索連動型広告も、デバイスによって広告を出し分ける手法が必要になってくるのではないでしょうか。シチュエーションによるGoogle検索利用の相違の例を挙げると、PCで「パスタ」と調べるときは「パスタの作り方」、iPhoneで「パスタ」と調べるときは「パスタ屋の場所」と考えられます。
その場合、同様のリスティング広告を表示することは、ユーザーにとってマイナスです。この事象はGoogleの目指す「すべてのユーザーが欲しい情報に到達しやすくなること」というビジョンに反するので、デバイスターゲティングによる解決が望まれます。
さもなければ、広告が想定シチュエーション外の場所に掲載され、広告主にも無駄なコストを生じさせる結果になってしまいます。
さらに今後、ユーザーは、PC、ケータイ、ゲーム機(Wii、ニンテンドーDS、PSPなど)、あるいは家電製品と、すべてのインターネット端末からサイトへのアクセスが可能になると考えられています。
モバイルマーケテイングがユビキタスマーケティングに発展した世界では、広告主、広告会社が今まで以上にユーザーの利用シチュエーションを意識し、コンタクトポイントごとに訴求を変化させることが求められるのではないでしょうか。
慶応義塾大学経済学部在学中、武山研究室にてモバイルマーケティングの未来像をキャリアと共同研究。同時に学生ベンチャー立ち上げを経験。卒業後、民放キー局に就職、番組制作に従事。退職後、2006年(株)オプト入社。2007年7月オプトビジネスプランコンテスト最優秀賞受賞。モバイルニュースとプライベートを綴るBLOG『イセオサム会議』の運営が5年目に突入。
外資系光学機器メーカーを退職後、渡米。カリフォルニア州立大学サクラメント校を卒業後、2005年1月(株)オプト入社。マーケティング部配属となり、ネット広告全般のプランニングや調査など経験。現在、経営戦略部に所属し、海外の市場動向を探る。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス