logo

規制緩和で「自己責任」は無責任では--通信の水平分離をめぐる議論

永井美智子(編集部)2008年06月10日 22時42分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 「規制緩和によって利用者の安心、安全が失われるケースをいくつも見てきた。市場の公平性が高まることで事業者は恩恵を受けるが、消費者は『自己責任だ』といわれるだけ」――総務省が6月5日に開催した第4回通信プラットフォーム研究会において、構成員を務める主婦連合会副常任委員の河村真紀子氏は、行き過ぎた規制緩和に警鐘を鳴らした。

 通信プラットフォーム研究会は、コンテンツやアプリケーションが円滑に流通できるように、各社の認証課金プラットフォームの連携を強化することを目的に有識者が議論する場だ。

 たとえば、携帯電話事業者が利用者を認証する仕組みや課金システム、端末の位置情報把握機能などをサービス事業者に公開すれば、事業者がより自由にサービスを開発、提供できるといったことが想定されている。

 河村氏は、市場が特定の事業者に独占されている状況が良いわけではないとしながらも、ただ規制を緩和すれば市場全体が良くなるわけではないと警告する。

 例として河村氏が挙げたのは、クレジット業界だ。悪質業者でもクレジット決済が利用できる状況があり、消費者が高額商品をクレジット決済で割賦購入した後に、悪質な商品であったことが判明した場合でも全額を支払わねばならないといった事例が生まれている。

 これは、販売契約に問題があって無効になった場合でも、クレジット会社は顧客から受け取った代金について返還義務がないといった制度自体に問題があると河村氏は指摘する。

 「クレジット業界は規制緩和によって、悪徳商法の事業者がたくさん入ってこられるようになった。『消費者の選択によって悪質な事業者が駆逐される』といわれるが、実際はそうでもない。特に子どもでも携帯電話を持っている状況下において、消費者が危険に直接さらされることになる」(河村氏)

 河村氏はただ独占が悪いというだけではなく、健全な事業者が有利になるような仕組み作りが不可欠だととく。「自主規制だけでいくのは難しい。必ず市場に混乱が起きるだろう」

 また、甲南大学経済学部教授の佐藤治正氏も、「ネットワークや端末などは自由に選べる状況がいい」としながらも、「現在のビジネスモデルで、どんな問題があるのか。それがオープンになることで、どんな問題が生まれ、どんな副作用があるのか。特に消費者への影響がどうなのかを議論する必要がある。声の大きい人の意見ばかりが反映されるようではいけない」とし、地に足の着いた議論が必要であるとした。

 具体的なオープン化の方法としては、ジェーシービー市場開発企画部長の森克実氏が提案したモバイルコンテンツの認証、決済方法が注目を集めた。森氏によると、現在モバイルコンテンツの認証、決済機能は主に携帯電話事業者が提供しており、クレジットカード事業者などとの競争がないために決済手数料が高止まりしている点、契約している通信事業者を変更した場合に購入済みのコンテンツデータを引き継げない点などが問題だという。

 そこで森氏は、利用者が携帯電話の申込書などで認証、決済プラットフォームを選べるようにすべきと提案した。これに対しては佐藤氏が「認証、決済機能をネットワークの外側に切り出すというのはアンバンドルという考えに近く、新しい視点だ」と評価。

 また、KDDI理事 渉外・広報本部長兼渉外部長の長尾毅氏も「プラットフォームを共通化することだけが方法ではない。この方法もありかな、と思う。現在のシステムでユーザーIDをどういう目的で使っているかにもよるため、実現可否について即答はできないが、選択肢を広げるのは重要だ」とした。

-PR-企画特集