「コミュニティ」をカギにYouTubeとの差別化はかる日米動画共有サービス

岩本有平(編集部)2008年06月05日 21時08分
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 すでにモンスターメディアとも呼べる認知度となった動画共有サービス「YouTube」。動画共有サービス市場で一人勝ちするかと思われていたが、「コミュニティ」という概念を軸に動画共有の新しい方向性を見いだしたサービスも登場している。

 Infinity Ventures Summit(IVS) 2008 Spring初日の第2セッションAでは「オンライン動画コミュニティビジネスの展望」と題して、米国で動画共有サービス「Crunchroll」を提供するCrunchrollのCo-FounderであるVu Nguyen氏とCo-FounderでCEOのKun Gao氏、動画共有サービス「ニコニコ動画」を提供するドワンゴ ニコニコ事業本部事業推進部部長でニワンゴ代表取締役社長を務める杉本誠司氏が登壇。動画共有サービスの新潮流を語った。

 米Crunchrollはアニメコンテンツに特化した動画共有サービスだ。現在約450万ユーザーを誇るが、ここまでの成長に大々的なマーケティングを実施していない。口コミでユーザーを拡大したのだと説明する。

Crunchroll Co-FounderのVu Nguyen氏 Crunchroll Co-FounderのVu Nguyen氏

 Crunchrollのサービスは、動画の投稿や視聴だけではなく、一般的なソーシャルネットワーキングサービス(SNS)と同等のコミュニケーション機能や、コンテンツ情報を共有するWikiをユーザーに提供する。これにより、同じアニメのファンなど、共通の趣味を持つユーザー同士のコミュニケーションを広げるほか、発言や投稿に応じてポイントが付与される仕組みも提供する。また、フォーラムのモデレーターもユーザーの中から選ばれたボランティアであり、「ユーザーがコミュニティを運営する」という仕組みを作っている。

 そして、同社は収益化にそのコミュニティの力を活用する。ユーザーがコミュニティで発言した際にプレミアムとして星形のバッジが表示される「Star Menber」を有償提供するほか、コンテンツプロバイダーが提供した動画について、ユーザーの評価次第で料金を支払う「寄付金モデル」での課金システムを用意する。同ビジネスではGDHグループのゴンゾとも提携している。

 Nguyen氏はこのようなコミュニティ運営に必要な要素として、(1)サービスの目的を明確に設定すること、(2)一貫性のあるブランディングをすること、(3)コミュニケーションのためのプラットフォームを提供すること、(4)ユーザーに評価を与えること――の4点を上げる。

 このようにコミュニティを軸にしてサービスの価値を生み出しているCrunchroll。しかし、このようにユーザー主導でのコミュニティ運営では、企業サイドでのコントロールがとりにくいという懸念が残る。Nguyen氏は「そのメリットとデメリットを判断するのが運営のキーになる」と説明した。

Co-FounderでCEOのKun Gao氏 Co-FounderでCEOのKun Gao氏

 Kun Gao氏はマスメディアに比べて「ニッチなコンテンツを、言葉や文化を超えて広い層にコンテンツを提供できる」と動画共有サービスの利点を語る。

 米国でも人気の日本のアニメだが、1980年代にはVHSのビデオテープを購入し、字幕をつけてほかのユーザーに郵送するといった形で流通していたのだという。それが2000年代にはデジタルデータにソフトウェアで字幕をつけてPtoPで配信するという手法をとるようになった。そして現在ではCrunchroll上で投稿、字幕、配信まで可能になったと説明した。事実、英語の字幕で投稿されたコンテンツが、有志によって翌日には違う国の言語で字幕をつけて投稿されるということも少なくないという。

 しかしその一方で問題となるのが著作権だ。同社では「現在は権利者からの要請を受ければ画像を削除している」とコメント。そして今後は「コンテンツホルダーと提携してビジネス化を進めていきたい」と方向性を語った。

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