工場用間接資材のインターネット通信販売を手掛けるMonotaROの株価が急上昇している。2008年初までは売買の人気が低迷し、株価も10万円を下回る水準で推移していた。しかし、新興市場全般に停滞感が強まる中でその存在感を高めてきている。
MonotaROは2006年末に東証マザーズへ新規上場。上場当時は60万円を越える株価を形成していたが、上場後は需給環境の悪化から下落が続き、2008年の1月23日に9万5400円の最安値を付けるまで下落していた。新興市場で人気のインターネット関連企業ながら、手掛けている製品が切削工具や研磨剤、作業服、ネジ、配管などといった向上用の間接資材という地味な分野ということもあり、買い人気が続かなかった。
株価は2月に入り上昇基調に入った。きっかけは2月13日に発表した12月期決算。2007年3月期は成長率が一時的に鈍化したが、今期は連結売上高が前期比19%増の130億1600万円、経常利益は同73%増の8億4000万円と、高成長計画を示した。これまでの長期間にわたる大幅な株価下落により、MonotaRO株はインターネット関連企業銘柄の中で割安な水準にあった。
業績面から見直しが進み始めた頃、MonotaROに新たな強力材料が浮上する。同社は5月2日、自動車関連業界向け商品販売事業への参入を発表した。
MonotaROが参入したのは自動車整備業やガソリンスタンド、カーディーラー、板金・塗装業、運送業などを対象とした商品販売。これらの業界も、MonotaROがこれまで手掛けてきた工場用間接資材業界と同様に成熟し、縮小傾向に向かい始めている市場だ。一見、成長著しいインターネット企業が新たに参入するような業界には見えないが、ここにMonotaROの強さが隠されている。
工場用間接資材は、これまでは太いパイプを持った専門商社などが仕入れを牛耳っていた業界。もちろんながらインターネットというインフラが入り込んでいなかった業界であり、MonotaROはネット通販による流通コストの低さを武器に利益率を高め、利便性を武器に猛スピードで業界シェアを奪っていった。今回新たに参入した自動車関連業界も業界環境は工場用間接資材と似ており、MonotaROの活躍余地が大きいとみられている。
加えてそれぞれ商品数が非常に多く、いわゆるロングテールビジネスの有効性が発揮しやすい業界でもある。ネットビジネス業界で折に触れて叫ばれるキーワードだが、それを体現し、高い利益率を残している株式公開企業は少ない。MonotaROは新興市場における「ロングテールビジネスの体現者」として注目を集めている。
自動車関連業界の市場規模は、MonotaROがこれまで手掛けてきた工場用間接資材より大きなマーケットがあるとされている。今後、MonotaROの業績を大幅に引き上げる可能性もありそうだ。
5月14日には2008年12月期第1四半期(1〜3月)決算を発表。連結売上高は前年同期比22%増の31億800万円、経常利益は2億6700万円と前年同期6700万円の赤字から一気に回復した。2008年12月期6月中間期計画と比較した進ちょく率は経常利益ベースで69.5%に達した。今期業績計画には大幅上方修正期待も高まっている。
株価は年初に10万円割れの水準にあったが、2月以降の相次ぐ強力材料浮上を受けて大幅に上昇。5月30日には44万6000円の高値を付けた。一方で株式の物色人気を示す売買高は、1月は数十株台だったが、5月末には1日4000株を超えた日もあった。今後は、2006年末の上場時に付けた60万円台をうかがう展開へ進んでいきそうだ。
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