仮想世界サービス「Second Life」を運営する米Linden Labの創立者で、会長を務めるフィリップ・ローズデール氏が来日。5月30日には同氏をはじめ、Linden Labの日本担当者や日本でSecond Life関連事業に関わるプレーヤー、産学官の関係者らによるラウンドテーブルが開催された。
内閣府の災害予防・国際防災協力担当参事官の鳥巣英司氏は「仮想社会と防災教育」と題して講演。鳥巣氏は「社会への防災の啓蒙活動として、仮想世界に注目している。防災教育における仮想社会の活用は、自然災害をイメージし、災害への備えの重要性を実感したり、避難訓練への応用といった体験型防災教育への活用だけでなく、防災教育で重要なテーマを果たす集いのための新たなプラットフォームとしての活用など、多くの可能性がある」と語った。
2008年1月に開催された内閣府主催のイベント「防災とボランティアのためのつどい」では、実際の会場とSecond Life上会場で並行してイベントが開催されたという。また、最新のIT技術を駆使した災害シュミレーターを作成中で、近くオンラインで提供できるよう準備が進められていることも明かした。
一方、慶應義塾大学理工学部生命情報学科専任講師の牛場潤一氏は、同大学で研究中の「ブレイン・マシン・インターフェース」を紹介する。ブレイン・マシン・インターフェースとは、脳の神経ネットワークでの活動を電気信号としてケーブルやインターネットを介してコンピュータに入力するインターフェースで、同大学では肢体の不自由な人の脳波を測定し、Second Life上のアバターを動かす研究を進めている。
牛場氏は「メタバース(インターネット上の3次元空間)は教育での活用度が高い。我々は、本当に必要な人にSecond Lifeをひとつのアプリケーションとして使ってもらえるよう研究と教育に利用している」と語った。さらに、マーケットが広がれば機器も安くなるはずだとした上で「大学は新しいテクノロジーのための研究開発をするが、それを実際に世に広めるディストリビューションのノウハウは持っていない。そのあたりは民間の企業に期待したい」と語った。
Second Lifeの日本市場における参入のコンサルティング事業を手掛けるマグスルの代表取締役の新谷卓也氏は、Second Lifeにおける日本人ユーザーの特徴について「従来の仮想世界もネットを利用して人が集まるビジネスモデルを作ろうとしていたが、ユーザーがコンテンツを消化する時間が早く、コストが掛かりすぎてうまくいかなかった。Second Lifeは埋もれているクリエーターに外貨を与える機会になった」と語る。
さらに、日本人はクオリティに気を遣う国民なので、多くのデジタルコンテンツを生み出すことにつながるのではないか」と指摘。ただし、「日本人にとっては言語のハードルも高い。さらに日本人は初対面の人や場所に接触する『プレコミュニケーション』が難しい国民」と述べ、日本人特有のこうした傾向を打破するために、Second Life内にオープンカフェを設置した経緯を明かした。
各出席者からのプレゼンテーションを受け、フィリップ・ローズデール氏は「日本は現実世界を再構築して販売につなげていくことに長けている。これは世界にはない日本ならではの特長だと思う」と感想を述べ、「日本は世界で4番目にSecond Lifeの利用者が多い国。また、ユーザーの利用時間は、世界平均が50時間であるのに対して、日本は70時間と長いのも特徴。そういう意味では、開発面への影響も大きいと思う」と語った。また、今後の課題について「スタビリティー(持続性)を確立するためにパフォーマンスの改善が第一。さらにユーザビリティやサポートを強化していきたい」と続けた。
そのほか座談会には、Second Life上で音楽活動をするミュージシャンのはたけ氏や、Second Lifeを活用したテレビ番組の制作を担当している日本テレビ技術統括局技術戦略センター技術開発部の安藤聖泰氏、国内でSecond Lifeの電話サポート事業などを展開するSUNの代表取締役副社長・奥井宏太朗氏、Second Life専門のブログポータルサイトなどを運営するメタバーズの代表取締役・島谷直芳氏が出席した。
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