自由回答は、集計にも分析にも多くの時間を要します。それに比べ、選択式の設問であれば調査結果をグラフ化することが容易な為、調査結果を視覚的に理解することができます。
ただし、貴重なデータは、そう簡単に手に入るものではありません。もちろん苦労すれば必ず報われるというわけではありませんが。ただし、自由回答であっても、調査設計時に想定していた域を超えることのない意見ばかりが集まってしまう事も残念ながらあります。
しかし、デザインを評価しているユーザーの中には、「最先端な感じがする」と感じるユーザーもいれば、「ダサカッコいい」と思っているユーザーもいる可能性があります。この2人の当該商品に対するイメージはまったく異なるものですから、当然のようにプロモーションのアプローチ方法(補給方法など)も当然のように変わってきます。
これを選択型の調査にしてしまうと「デザインが良い」でくくられてしまい、表層的な調査結果となってしまいます。
つまり、抽象的な表現を細分化し、ユーザーの言葉で説明してもらう事で、ユーザーへのアプローチ方法を明確化する事ができるのです。
心理学者であるユングは、「潜在意識による認識は、氷山の一角に過ぎず、人間の行動における95%は無意識の状況下で行われている」と述べました。つまり、人は考えるよりも感じて行動しているという事です。意識するという行為は考えという行為につながり、そして人は考えると理屈を語りたがる傾向があるようです。こうなるともう本音とは呼べず、もうそこは建前や理屈の世界です。
回答者に考えさせない方法としては、画像を使ったコラージュ法などがありますが、一般的な調査についても、選択肢の数やその表現方法をわかりやすくする事で調査の質は変わってくるでしょう。
また、人は誰だって自分にとってマイナスとなるような発言は控えたいもので、これについても本音ではない建前を答えさせてしまう可能性があります。インターネットの特徴が匿名性にある事を考慮すれば、グループインタビューなどに比べれば消費者の本音を引き出しやすい環境にはありますが、それでも回答者の心理状態を考える事が調査の成功には必要となるでしょう。
消費者調査は各設問単位で分析するだけでも、多くの気づきを提示してくれる有効的なマーケティングツールです。ただし、それだけではなく複数の設問から得られる結果を多角的に分析することでさらに見えてくるものがあります。
基本的なところで言えば、「利用しない理由+どうしたら利用するか」や「利用している理由+どうしたら利用していなかったか」などが挙げられます。このほかにも、「利用意向」とたずねる際は、商品やサービスにおける細かい評価(商品コンセプト、価格、パッケージなど)を同時に調査することで、何が利用意向につながっているのか、逆に利用意向が低い製品はどういった要素が原因なのかを把握することができます。
調査は有益なマーケティング手法ではありますが、決して完璧なものではありません。リサーチの利用意向が高かったからといってその商品の成功が約束されるというものではありません。要は傾向を把握する為のものなのです。
絶対ではない以上、私たちはこうも考えなければなりません。
「自分の感性を信じろ!」
調査における仮説出しの重要性は前回も述べましたが、消費行動の95%が無意識に行われている以上、仮説出しにも感覚的なものが求められます。個人、チームで共有した仮説の検証に向かって最低限のポイントを押さえて調査を進めることが良いのではないでしょうか。
小山田瑞斉(セプテーニ)
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